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2016/11/03

習慣を変えるには:チャートの実例〜アルコール依存症

 

さて、今回は、
「習慣を変える」シリーズの
3回目です。

診療の現場で実際にあった例を、
個人情報に配慮する範囲で修正して、
お伝えします。

48歳、女性、倦怠感を主訴に通院を開始。
夫と二人で飲み屋さんを自営している。
仕事がら、毎晩、
ビールと焼酎をかなりの量、飲む。
が、検診で肝臓の異常を
指摘されたことはない。
自分もアルコール依存とは思っていない。
10代から飲んでいる。
夜の仕事なので、
寝るのは3時を過ぎることも。

この時点で、
彼女の習慣収支マンダラチャートは、
どうなるのか?

前回の復習ですが、

「5|8|7|
|4|9|6|
|2|1|3」

1:からだ 2:性 3:お金
4:感情 5:感覚 6:イメージ
7:ことば 8:信じていること
9 変えたい習慣(症状)、

でしたね。
ダウンロードは ★こちら

診察を通じて把握した情報を
整理すると、以下。

9は、倦怠感。
1は、多量飲酒、不規則な生活、顔色不良。
2は、冷めきった夫婦関係。
3は、家計は火の車。
4は、なんとなくイライラ。
5は、倦怠感、動悸。
6は、「休むヒマなくバタバタしている自分」
7は、「私はアル中じゃない」
8は、「この仕事を続けるしかない」

その彼女が、ある日、突然、
腹部の激痛と嘔吐、高熱で緊急入院。

診断は急性膵炎。
多量飲酒が誘因となる内科疾患です。
命を落とす場合もあります。

当然、内科医からも、私からも
断酒が指示されましたが、
本人は、のらりくらり。
この時点で、
アルコール依存症の診断が確定。
繰り返し、飲酒を続けることの
ダメージを伝え、
退院時、なんとか、
ノンアルコールで業務を続けることを
約束してくれました。

予想に反し(苦笑)、
彼女は約束をよく守ってくれました。

しかし、一月もたたないうちに、
急性膵炎が再発。
同じ激痛で緊急再入院・・・

これには、彼女はもちろん、
我々も驚きました。
誘因は、飲酒だけではない。
自営の飲み屋さんの業務による、
不規則な生活と睡眠不足、
これを修正しない限り、
また、再発する。

夫を交えた面談を繰り返しました。
そのプロセスで、
彼女に大きな変化が生じました。

そして、再入院の退院時、
彼女の状況を、
チャートにまとめていたとしたら、
以下のようになったでしょう。

9は、倦怠感(でも以前よりマシ)。
1は、断酒継続。顔色は以前よりマシ。
「もうお酒なんて欲しいと思わない」
「というか、
最初からそんなに好きでもなかった」
2は、冷めきった夫婦関係はより険悪に。
3は、家計は火の車、これは同じ。
4は、夫へのイライラ。急性膵炎への恐怖。
5は、急性膵炎の激痛の記憶。
倦怠感はあるがマシ。
動悸はなくなった。
6は、「夫のいいなりになっている自分」
7は、病気の養生に関する具体的な知識
8は、「この仕事をやめて日中に働くこともありだな」

最初のチャートから、
次のチャートへの変化で、
一番わかりやすのは、

急性膵炎の激痛(5)が
急性膵炎への恐怖(4)を生み、
病気の知識を習得させ(7)、
断酒という行動(1)に結果した、
とうい流れです。

これは、
習慣が変化する時の、
もっとも劇的なパターンです。

でも、そもそも、彼女の9は、
断酒ではなく、
倦怠感をなんとかしたい、
でしたね。

だから、彼女はいま、
決して大きな達成感を
感じていませんし、
外来では、
だるい、だるい、を繰り返します。

もう一つの変化は、
夫との関係です。

二度も死ぬ思いをしたのに、
家計の事情で、
飲み屋を手伝うのは当たり前、
と信じて疑わない夫への、
不信、不満、不快、です。
その結果、
6と8に変化があります。

ところが、
自営の手伝いをやめて
日中の仕事に就く、
その自信もありません。

だから、自営の勤務日を
少しだけ減らす交渉を
夫とするのが、精一杯。

さて、あなたなら、
彼女が、9を変えるために、
今後、どうすればいいか、
どんなアドバイスをしますか?

・・・

チャートには、
海図、という意味があります。
彼女の海図は、
すでに多くの情報を
語ってくれています。

今まで、
アルコールのいいなりになっていた
彼女が、
それから自由になった途端、
こんどは、
夫のいいなりになっている自分に
気づいた、と言えます。

その夫から自由になるには、
どうすればいい?
それが次のテーマですが、
そのためのヒントは、
アルコールから自由になった、
そのやり方に、あるはずです。

でも、彼女は、
自分が断酒できていること、
その意味について、
とても無自覚ですね。

恐怖がさせた行動の変化は、
得てして、
こういう無自覚を生むようです。

この断酒の変化を、
夫との関係の修正、
生活習慣の修正に活かし、
倦怠感の緩和を目指す、
それが、一つの
海図の読み方でしょう。

さて、習慣を変えたいと思ったとき、

Do:
チャートを使って、
いま、まさに起きている変化を
しっかり捉え、
起こしたい変化につなげる。

Don’t:
チャートを使わず、
いま、まさに起きている、
大きな、あるいは小さな
変化に無自覚なまま、
結果だけを求める。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。