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2017/05/25

パニック障害の曝露療法は感情リテラシーの実践である

さて、
感情リテラシーのテーマ、
今回が最後です。

前回は、
「さみしさ」「悲しみ」という
不快な感情との付き合い方を、
具体例で確認しました。

今回は、
「不安」と「恐怖」。

一部、個人情報を修正した
実際のケースを、ご紹介します。

※テキストはこちら↓
うつ病の治し方:感情リテラシー入門①〜愛と悲しみ編
うつ病の治し方:感情リテラシー入門②〜イヤイヤとワクワク編
うつ病の治し方:感情リテラシー入門③〜希望編

・・・

35歳、女性、パニック障害。

外出が恐くて、
ここ6年、
自宅に引きこもりの生活が
続いていました。

外出すると、
ちょっとした刺激で、
パニック発作が起こるからです。

受診をきっかけに、
リハビリのプランを相談しました。

まず、夜、お母さん同伴で、
ちょっとだけ、
外出のリハビリをしてみる。

人の視線が恐い。
だから、夜の方が、まし。

一人は、無理。
お母さんと一緒で、
短時間なら、なんとかなるか。

最初は10分で、
冷や汗が出てきてギブアップ。

でも、少しずつ時間を延長し、
30分の散歩が
できるようになりました。

すると、本人から提案。
もともと、サイクリング好き。

自転車にのってなら、
一人でできるかも。

人とすれ違っても、
シャーって、走りぬければ、
大丈夫じゃないか。

で、実際、やってみて、
うまく行った。

今では、
夜中ですが、1時間、
サイクリングが
できるようになりました。

この外出中に、
発作はありません。

・・・

いかがでしょうか。

この治療は、
曝露(ばくろ)療法」と呼ばれます。

症状を引き起こす刺激に
少しずつ「曝す(さらす)」ことで、
心身を慣らしていく訳です。

パニック障害に限らず、
強迫性障害や
社会不安障害などにも用いられる、
スタンダードな治療法です。

彼女の曝露療法の中で、
一体、何が起きているのでしょうか?

感情リテラシーの観点から、
整理してみましょう。

まず、彼女の場合、
どんな感情を体験し、
その結果、
どんな行動を取っているのか、
その状況は、
とても、明瞭です。

他人が「恐い」。
その結果、
パニック発作という行動を取る

そのパニック発作が「恐い」。
その結果、
自宅に引きこもるという行動を取る

自宅に引きこもれば、
ひとまず、
「恐怖」は回避できる。

でも、
外出することへの「不安」に、
常に付きまとわれている。

この状況で、
母の同伴には、
大きな意義があります。

「恐怖」が促す行動は、
「防御または逃走」
あるいは「援助の要請」でした。
(テキストより)

夜の散歩中、向こうから
知らない人が歩いてくる。

「恐怖」を感じても、
隣に母がいれば、
「援助の要請」ができる。

グッと母の手を握ったり、
母の後ろに隠れたり。

恐怖を感じても、
必要な行動が取れる訳です。

そして、ここが重要ですが、
パニック発作という行動を、
取らなくてすむ。

恐怖、という感情に対して、
より適応的な行動で、
対処できるわけです。

すると、自信がついてきます。

自転車に乗っているなら、
母がいなくても、大丈夫。

なぜなら、
「恐怖」を感じても、
「逃走」できるから。

このようなメカニズムで、
恐怖→パニック発作、
というパターンを、

恐怖→援助の要請/逃避、
というより適応的なパターンに、
修正して行くわけです。

ポイントは、
恐怖、という感情を
リアルに体験する状況に
向き合うことななくして、
この修正はできない
ということです。

さて、
いかがでしょうか。

最後のまとめは、
実は、前回と同じになります。

Do:
その感情が促す行動を、
自分にとって必要だと自覚し、
それが許される場で、
しっかり表現する。

Don’t:
その表現を、
恥ずかしいなどを理由に控える、
あるいは、
周囲への配慮なく暴走させてしまう。

今回の例の、
彼女の場合、
引きこもりが「控える」に、
パニック発作が「暴走」になるでしょう。

それでは今週も
マイペースで乗り切りましょう!