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2017/05/05

あなたのうつ病のタイプは?:うつ脱出のための基礎知識②


うつ病に苦しむ方に、しんどい中で学んでもらう知識は、うつ病からの脱出に役に立たなければ、意味がありませんよね。
自分をどう治療したらいいのか、それがわかるような、うつ病の見方が必要です。

この記事は、「うつ脱出のための基礎知識」のシリーズ、2回目です。
自分に必要な治療法が何なのか、
それがわかるための、うつ病のタイプ(型)について学びます。

1回目はこちら↓
うつ病とは?:うつ脱出のための基礎知識①
そこでの知識が前提になりますので、
是非、目を通してください。

では、あなたのうつ病のタイプを検討していきましょう。※これは当院独自の分類です。

ヒトの4つの機能の中で、
あなたが一番、ダメージを受けている機能は、どこですか?

からだ型

「感じる」「動く」の機能低下が優勢の場合、からだ型、と呼びましょう。
「信じる」「考える」をターゲットとした治療だけでは効果が乏しい場合が多いです。架空の症例は、Aさん。

Aさん、45歳、男性、会社員。
うつとは無縁と思われていたが、昇進後の激務でダウン。
紹介されたカウンセリングを続けたが「出勤しようとしても体が動かず」休職。
業務へのモチベーションや会社での自分の意義についてゆらぐことはなかった。
抗うつ薬の調整に手間取ったが、2つ目がスパッと効いた後、順調に回復。
同じカウンセラーからプラス思考をすすめられたがピンとこず。
心理教育は役に立った。1年後には復職し、再発なく就労中。

この例では、外れたチェーンにロックがかかっていたと言えます。
でも、一旦、チェーンがかかれば、「信じる」「考える」の機能低下は少ないため、
発病時と同じような負担を、「感じる」「動く」にかけなければ、
チェーンは外れにくいタイプです。

つまり、いかにロックを外し、チェーンをかけ直すかが
ボトルネックとなる場合が多いタイプと言えます。

臨床的な特徴をまとめると

⚪️一旦、うつ病になると、からだの症状は比較的重い。
⚪️抗うつ薬が効きやすい。
⚪️カウンセリングはかみ合わない場合も多い。
⚪️一旦、回復すると、よほどの負担が再びかからない限り、かなり安定している。

こころ型


「信じる」「考える」の機能低下が優勢の場合、こころ型、と呼びましょう。
「感じる」「動く」をターゲットにした治療だけでは効果が乏しい場合が多いです。架空の症例は、Bさん。

Bさん、32歳、女性、会社員。もともとクヨクヨする性格。
夫との離婚を契機に「自分は何をやってもダメだ」と落ち込み、パラパラと欠勤するため、心療内科を受診。
抗うつ薬を次々試すが、ちょっとよくなった気がしてもまたしんどくなる。
認知行動療法をやっても、自分の感情がわからないから、効果がわからない。
結局、通院も内服もやめた。
知人の紹介でカウンセリングを開始。
高圧的な母と姉の前で常に萎縮していた自分を振り返った。
子供の頃、下手でも好きだったのに「あんたに月謝を払う意味がない」とやめさせられたピアノを再開。
1年後、新たな出会いがあり結婚後、欠勤なく勤務中。

この例では、チェーンは外れるものの、ロックされるまでには至りません。
でも、チェーンがかかっても、「信じる」「考える」の機能低下があるため、
「動く」への負担は続き、また、チェーンが外れてしまいます。その繰り返し。

つまり、いかにチェーンが外れないようにするかが、
ボトルネックとなる場合が多いタイプと言えます。

臨床的な特徴をまとめると

⚪️一旦、うつ病になっても、からだの症状は比較的軽い。
⚪️抗うつ薬が効きにくい。
⚪️カウンセリングがかみ合うと、大きく回復する場合がある。
⚪️一旦、回復しても、容易にぶり返す。

混合型

4つの機能の全てが、低下している場合、混合型、と呼びましょう。
どこがボトルネックなのかわからない場合が多い。
初発時は、からだ型、または、こころ型だったケースが、長期化のダメージにより混合型となる場合もあります。架空の症例は、Bさんの、その後。

Bさん、34歳、女性、専業主婦。
退職し出産した長女に障害があり、産後、一時もこころと体が休まる時がなく、6ヶ月後に完全に寝込んだ。
夫はカウンセリングの再開をすすめたがとてもそんな体調ではない。
ほとんど食べられなくなり、結局、精神科に入院。
「すべて自分が悪い」と拒食が続くため、修正型電気けいれん療法を施行。
食事はとれるようになり、一旦、退院。その後、辛うじて家事はできるが、育児はとても無理。
長女を実家に預け、引きこもりの生活が続いた。通院と抗うつ薬を再開。
生活リズムの維持や定期的な長女との接触を行動療法として位置づけた。
同時に、長女に対する感情をカウンセリングで丁寧に扱い、
母や姉が自分を見たようにしか、我が子を見れない自分への嫌悪を解きほぐしていく時間が過ぎた。
1年半後、長女を引き取り、夫との三人暮らしを始めることができた。

この例では、初発時はこころ型だったものが、
初発時以上の負担がかかり、からだ型を合併し
外れたチェーンは完全にロックされてしまいました。

それを解除するには、その力のないカウンセリングではとてもかみ合いませんし、抗うつ薬でも力不足でした。
入院による修正型電気けいれん療法を要しました。
その結果、ロックは解除され、チェーンはかけ直されました。

しかし、それですべてが解決するわけではありません。
「信じる」「考える」「感じる」「動く」、それぞれの機能を回復させつつ、
長女を、そして長女を受け入れることができない自分を、いかに受容していくか、というテーマに沿って、
集中的なカウンセリングが必要でした。
これが、「またすぐチェーンが外れてしまう」という、こころ型の特徴への対策となりました。

混合型の場合、
まず、チェーンが外れて、ロックがかかっているなら、それを、解除する。
そして、4つの機能の回復を図りつつ、チェーンがしっかりかかるのを、待つ。
同時に、再びチェーンが外れないように、
特に「信じる」「考える」「感じる」のパワーアップに取り組む。
いわば、総力戦、となります。

臨床的な特徴をまとめると

⚪️うつ病になってもう長い。
⚪️からだの症状は、重かったり軽かったり、波がある。
⚪️抗うつ薬が効きにくいが、効いた過去もある。
⚪️カウンセリングがかみ合うと、大きく回復する場合があるが、その効果があとかたもなく消えることがある。
⚪️なかなか回復しないが、回復しても、容易にぶり返す。

あなたのうつ病のタイプは?

もちろん、100%のからだ型も、100%のこころ型も、ありません。
ある意味、うつ病はすべて、混合型です。

でも、あなたのうつ病のタイプ(型)が、
からだ型と、こころ型、その両端の間の、どの辺りなのか、そのイメージを持つことは、
必要な治療について検討する際、決定的に、重要です。

からだ型の比重が大きい場合、
仮に、最初の抗うつ薬が効かなくても、
磁気刺激療法・TMSや、修正型電気けいれん療法・mECTなど、
ロックを解除させることができる治療を探す必要があります。
カウンセリングが、その代わりをしてくれることは、ありません。

こころ型の比重が大きい場合、
仮に、最初のカウンセラーが合わなくても、
かみ合うセラピーを提供してくれるカウンセラーを探す必要があります。
抗うつ薬が、その代わりをしてくれることは、ありません。

うつ病のタイプによって、
うつから脱出する努力の方向が、
180°変わってくることが、お分かりでしょう。

さて、この記事は、ここまでです。
次のステップは、
あなたのうつ病のタイプと、その治療法がかみ合っているか、
その確認です。こちら↓
うつ病のタイプと治療法のマッチング:うつ脱出のための基礎知識③