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2018/08/06

精神疾患と甘え①:甘えるな!と叫ぶ前に


さて、今回は、
「甘え」がテーマです。

患者さんや、
そのご家族から、
「甘え」という言葉は、
よく、出てきます。

例えば…

主婦のAさん。
体調が悪い時は、
どんなにやろうとしても
体が動かず、
掃除ができない。

で、リビングで休憩して、
TVを見て笑っていると、
夫が怪訝な顔をする。

そして、
診察に同伴した夫が、
「これって、
甘え、ですよね?」

ご家族さんから、
甘えているだけではないか、
と疑われる患者さん、
多いです。

これって、
甘えなんでしょうか?

皆さん、
どう思われますか?

・・・

手始めに、この
「甘えている」
という表現に含まれる、
いろいろな
認識や感情を、
整理してみましょう。

まず、
「怠けている」
「するべき努力をしていない」
という
状況の認識が、
ありますね。

加えて、
そんな状況は許せない、という
イライラや怒りが、
あります。

つまり、非難している
ということです。

なぜ、
非難になるのでしょうか?

もちろん、
そんな状況が続くと、
実害がある、
ということは、あります。

Aさんの夫なら、
自分が家事をしないと
いけなくなる、など。

でも、
そのイライラや怒りには、
もっと根本的なダメージが、
ひそんでいるように思います。

そんな状況が、
「自分の価値観とは異なる」
ということ。

もっと言うと、
「その状況を放置すると、
自分の価値観とは異なる価値観を、
黙認することになる」
という思いが、
あるはずです。

いわば、
自分の「信じる」
※ヒトの4つの機能の一つ
それへの、ダメージがある。

働き者であるべきだ、
とか、
限界まで努力すべきだ、
などの、
自分の信念が、
ダメージを受ける。

・・・

さらに
「甘えている」と
非難する時、

決まって、
相手に対する、
具体的な提案や助言は、
全くない場合が、多いです。

Aさんの夫なら、
Aさんがどうしたらいいか、
具体的なアドバイスには、
全く、思いいたりません。

これ、
どういうことでしょう?

一言で言うと、
その状況が、
全く、想像できない、
共感できない、
ということです。

・・・

つまり、
ある人が、
ある人に対して、
「あなたは甘えている」、
と言い放つ時、

実は、

「私はあなたのことが
全く共感できず、
私の価値観をゆさぶる
その不快な状況を
早く自分で尻ぬぐいしろ」

と言っていることに
等しい、
という場合が、多い、

というのが、
小椋の経験から出た、
一つの解釈です。

・・・

Aさんの夫の、
Aさんに対する非難、
これと同じことが、

自分の中で起きている場合も、
あります。

女子大生のBさん。
ここ半年、
朝が起きられず、
講義を欠席することが増えため、
心配になって、自ら受診。
「でも、これって、
甘え、ですよね?」

このように、
自分のことを、
甘えているだけではないか、
と疑う方も、多いです。

この状況では、
Bさんの中で、

かつてのBさんが、
現在のBさんを、
非難しています。

「私は、
現在の自分に全く共感できず、
私の価値観をゆさぶる
その不快な状況が許せない」
と、言っているわけです。

・・・

だから、診察室で、
「甘えている」
という発言が出た場合、
なかなか、メンドウですね。

だから、
甘えている、
甘えていない、
その判定を下すことよりも、

起きている状況について、
イメージをもてるようにする、
その努力から、
始めることになります。

Aさんなら、
何が起きて、掃除ができないのか、
何が起きて、TVを見て笑えるのか、
その時、起きていることを、
づぶさに聞き出すことになります。

Bさんなら、
いままで怠けたことなど
一度もなかったのに、
何が起きて、
朝が起きられなくなっているのか、
今までの経過を、
つぶさに聞き出すことになります。

そして、
Aさんなら、
Aさんの夫が、
Aさんに起きていることに、

Bさんなら、
Bさんが、
Bさん自身に起きていることに、

イメージがもてるようにする。

そして、
Aさんや、Bさんが、
抑うつ状態、
という特殊な状態にあるなら、
その状態の、
イメージがもてるようにする。

抑うつ状態以外にも、
幻覚妄想状態、
精神運動興奮状態など、

日常的には出会わないけど、
この世には存在する、
そんな状態の場合でも、
同じです。

・・・

ユングの心理学では、
受け入れることが容易でない対象のことを、
「影(シャドー)」と呼びます。

人が
「あなたは甘えている」と
言い放つ時、

実は、目の前に、
「影(シャドー)」がいる、
ということが、
あり得るわけです。

・・・

さて、
これは甘えではないか、
と思った時、

Do:
その状況に対する
イメージを持とうと努力する。
その結果、
自分の「影」との交流がすすみ、
自分の成長の機会となる場合がある。

Don’t:
やはり甘えだと、
切り捨てる。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。