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2017/12/08

精神科の薬を減薬するには?:症状がなくなっただけではダメな理由


さて、前回に続き、
薬物療法の話題です。

減薬できますか?

これ、すごーくよく
患者さんから聞かれます。

特に、
病状が一段落した方、
あるいは、
すでに一段落して久しい方から。

中には、
まだまだ病状が不安定なのに、
療養生活から早く脱出したい一心で、
聞いてこられる方も…。

いずれにせよ、
どのような条件をクリアすれば、
減薬できるのでしょうか?

今回は、このテーマを
整理してみましょう。

・・・

大前提は、
①:病状が安定していること。

具体的には、
症状がなくなってから、
一定期間、ぶりかえしがないこと。

一定の期間、とは
病状や、療養環境によって、
変わってきます。

そして、
②:徐々に減薬すること。

どのようなお薬でも、
急な減薬は、
・離脱症状が起きる
・病状のぶり返しが大きくなる
などのリスクがあります。

最後に、
③:お薬に頼らず、
自分でできるようになっていること。

実は、
この辺りの事情は既に、
以前のメルマガで少し扱っています。
こちら↓
精神科の薬とのつき合い方

今回は、この③について、
詳しく考えてみましょう。

・・・

多くの方は、
次のような思考になっています。

お薬が効いて、
症状が消えたから、
もう、お薬がなくても、
症状は出てこないだろう。

むむむ…そうでしょうか?

病気が再発するリスク、
それすらも根こそぎ、
消し去ってしまうお薬なら、
確かに、そうでしょう。

しかし、精神科に限らず、
ほとんどの「薬剤」には、
そのような作用は、期待できません。

肺炎に対する抗生物質も、
同じです。

確かに、
肺炎の症状は、消えます。
でも、もう二度と、
肺炎にならないように
してくれる訳では、ありませんね。

また、感染すれば、
肺炎になってしまいます。

でも、ウイルス感染症に対する
ワクチンは、違います。

ワクチンを接種することで、
そのウイルスに対する、
免疫システムが、
自分のカラダの中に生み出されます。

ウイルスが侵入しても、
その免疫システムが、撃退します。
発症しないですむ。

同じウイルスに対してなら、
もう、ワクチンは不要です。

これ、まさに、
「お薬に頼らず、
自分でできるようになっている」状態、
そのものです。

つまり、
いま、内服しているお薬が、
症状に対して、
自分にしてくれていること、

それを、

自分でできるようになっている、
いわば、
その症状に対する
自分の免疫システムが完成している、

その状態であれば、
そのお薬に関して、
減薬が可能、という訳です。

・・・

でも、この③は、
なかなかハードルが高いです。

なぜか?

そんな防御システムを
コツコツ用意するより、
パクッと内服する方が、
はるかに、簡単だからです。

前回の、眠剤の例を出すなら、
その場合の、
「防御システムの用意」とは、
「睡眠力を鍛えること」となります。

「睡眠力」とは…

生活リズムにメリハリがあり、
(活動記録表を利用して…)
日中に適度の活動があり、
(ストレッチなんかもやって…)
食生活も乱れがなく、
(精神栄養学も参考にして…)
睡眠衛生が整っていて、
日中の悩みを持ち越さず、
入眠を促す
自分なりの段取ができていて、
(マインドフルネス瞑想なんかも取り入れて…)
その結果、
途中で起きても再入眠できて、
再入眠できなくても、クヨクヨせず、
仮に眠りが浅くとも、
翌日、やるべきことができて、
きっと今日はぐっすり眠れるだろうと、
自分の睡眠力に信頼がある…

まあ、こんな感じの、
療養生活の総合力の結果、ですね。

けれど、
ヒトは基本、
ナマケモノです。

この力をコツコツ育てる、
そんなメンドウを、
誰がやるでしょうか?

上述がメチャクチャでも、
たった一錠、内服するだけで、
いちおう、眠れるなら?

スパッと眠剤が効く方ほど、
自分の「睡眠力」を鍛えることを、
怠ってしまいます。

ナマケモノが
顔を出してくるわけです。

・・・

この状況は、眠剤に限りません。

躁うつ病に対する気分安定薬

うつ病やパニック障害、
強迫性障害や摂食障害などにも使用する
抗うつ薬

統合失調症に対する抗精神病薬

診断名を問わず使用される
抗不安薬

どれも、減薬するとき、
結局、③のハードルが、
高くなります。

・・・

さて、
あるお薬の減薬を考える時、

Do:
ナマケモノの自分でありつつも、
なんとか、
そのお薬に代わる、
自分なりの
「防御システム」を準備する。

Don’t:
病状がなくなった、
それだけを根拠に
減薬できると考える。

はたまた、

どうせ自分はナマケモノだから
減薬は無理だとあきらめ、
落ち込む。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。