あいまいに耐える力とは?
受験シーズンも
大詰めになってきていますね。
※メルマガ発行日:H31/3/18
先日、
医学部合格を目指している
患者さんの診察がありました。
その日、
結果の報告があるだろうと、
わかっていました。
体調が万全ではない中、
なんとかしのいでやってきた、
そんな一年だったので、
正直、小椋は、
合格できなかったとしても、
致し方ないよな…
という気分でした。
でも、
結果は見事、合格。
おー、おめでとうー。
療養生活のどこがよかったか、
また、
今後、診療をどうするか、
そんな相談で、
その診察は終わりました。
・・・
その方の、
受験勉強をしながらの
療養生活には、
読者の皆さんに
役に立つヒントが満載なので、
ご本人の了承を得ていますので、
(仮名:Aさんとしましょう)
今回は、
Aさんの療養生活を、
個人情報に配慮したかたちで
シェアしたいと思います。
・・・
Aさんは、20代女性。
医学部受験のチャレンジは
今回で、複数回になります。
去年の3月、
再チャレンジを決めたものの、
もう、
こころは折れていました。
何のために、
こんなことやっているんだろう…
何のために
医者になるんだろう…
いつまで、
続くんだろう…
・・・
受験勉強のエンジンを
ガンガンかけないといけない
ゴールデンウィークに、
まったく、勉強が
手につかない。
周囲はどんどん、
勉強していく。
なんだか、みんな、
元気そう…
どうしようもうない、
孤独…。
どんどん出てくる、
不安とあせり。
もう一年やっても、
ダメだったら、どうしよう…。
もう、ダメなんじゃないか…。
両親にも申し訳ない…。
自分、向いていないんだ…、
きっと…医者に…。
でも、また、模試が来る…、
本当は、今日までに、
これ、やっとかないと…。
でも、
何もできてない…。
頭が、ぜんぜん、働かない。
テキスト、手にとるエネルギーがない。
どうする?
どうしよう?
あー、イライラする!
もう、こころが真っ黒。
寝ればいいのに、
スマホでコチョコチョ…
変に頭が冴えてる?
…消えた方が…
死んだほうが…
楽だよね…。
そんな中での、
初診でした。
・・・
その診察では、
この、頭が働かない、
という状態が、
脳というコンピュータが
機能低下した状態、
つまり、
抑うつ状態であることをお伝えし、
自分にムチを打っても
悪化するだけなので、逆に
二週間、
一旦、全く勉強から離れる、
それを自分に許すことを
提案しました。
で、
混乱と不安とあせりは、
ちょっと、よくなりました。
でも、
頭が働かない感じ、
勉強が手につかない感じは、
残っていました。
以後、
次のようなシンプルな方針で
勉強に取り組むことにしました。
・できる範囲でやる
・ムリ!と思ったらやらない
・・・
外来では、
おとといは、ここまでやったが、
昨日は、もうムリと思って寝た、
でも、今日はまた、勉強ちょっとできた…
などの報告を聞きながら、
Aさんが、
そのシンプルな方針を
体得するサポートを続けました。
キャッチフレーズは、
「あいまいに耐える」。
受験勉強を、
完全に放棄するわけでもない、
かといって、
理想をめざすわけでもない、
そんなやり方で
結果がでるかどうかも不明な、
すごーく、
グレーで、あいまいな、
受験勉強。
でも、その
「あいまいに耐える」力が、
これからの人生に、
ものすごーく、役に立つよ、
とアドバイスを続けました。
※なぜ、それが役に立つかは、
編集後記で。
・・・
その結果、秋頃には、
自分なりのペースを身に付けて、
長時間の模試でも、
途中で退席せず、
最後までできるようになりました。
先生、模試、やりきったよ、
などの報告がある中で、
Aさんの特徴は、
でも、参加するだけでは
意味、ないよね…
などの、ネガティブなコメントが
なかったこと。
だって、
あの、シンプルな方針では、
できる範囲でやったらOKで、
ムリなら、やらないのがOK、
だったから、
ネガティブなコメントは、
発生する余地がない。
思い返せば、
その頃以降、
落ちたらどうしよう…だの、
こんな少ない勉強時間だとムリだ…、
などの発言は、
一切、ありませんでしたね。
・・・
この時点で、
Aさんは、
既に大きな学びを
得ています。
合格は、
その学びの結果に付いてきたもの、
というぐらいの印象です。
その学びのポイントを、
整理してみましょう。
整理には、
既にこのメルマガでおなじみの、
ヒトの4つの機能、という考え方が
役に立ちます。こちら↓
習慣を変えるには:行動を変えるだけではダメな理由
・・・
脳が抑うつ状態になると、
「考える」が低下します。
低下しているのに、
未来の受験の合否の結果や
自分の医師としての適性など、
すぐに答えがでないことについて、
あーだこーだと、考え続けると、
結局、
不安とあせりとイライラが
膨れ上がります。
「感じる」が暴走するわけです。
すると、
脳はさらに疲れて、
「考える」はさらに低下します。
最初の2週間の休養は、
この悪循環をバッサリ断つ、
そのきっかけになりました。
同時に、
自分の脳は、通常の状態ではない、
その事実を、
いやいやながらも、受け入れる、
そんなきっかけにも、
なっています。
悪循環を断つことと、
その事実の受容がなければ、
「シンプルな方針」に従うことは、
できなかったでしょう。
・・・
シンプルな方針に
従うことができた時、
Aさんの4つの機能は、
次のような状態に、
なっていました。
「信じる」について。
もはや、
絶対に合格できる、だの、
私は医者になる運命だ、だの、
パワフルなイメージを
信じては、いません。
ただ、
先生が言っている、
「あいまいに耐える」、
それが、自分にとって意味がある、
そう、信じることが、
できている。
「考える」について。
・できる範囲でやる
・ムリ!と思ったらやらない
その方針を実行する時に必要な、
できるか?ムリか?という判断、
それを、
自分のこころとからだに
静かに聞いて、
判断する。
それ以外のことは
「考えない」。
「感じる」について。
こんな「あいまい」な日々だと、
当然、不安・あせり・イライラは
出てくる。
でも、それは、仕方がない。
そういうものだ。
そして、それに「耐える」自分をつくる、
それに意味がある。
「動く」について。
シンプルな方針に従って、
「考える」が
勉強、ゴー、とサインを出せば、
淡々と、やる。
「考える」が
今日は、ストップ、とサインを出せば、
淡々と、休む。
以上…、
という感じで、実行する。
・・・
皆さんは、
Aさんの、
この療養生活を知って、
どんな印象を持たれましたか?
これ、確かに、
言うはやすし、
行うは難し、の典型では、
あります。
でも、やりがいは、
あります。
このメルマガで紹介してきた、
感情リテラシー、
認知リテラシー、そして
スピリチュアルリテラシー、
そのすべてが総合されて、
実践されています。
・・・
さて、
感情リテラシー、
認知リテラシー、
スピリチュアルリテラシーの
具体的な実践が
よくイメージできない時、
Do:
Aさんの例を知り、
自分に置き換えて、
実践できる部分はないか、
探してみる。
Don’t:
過程ではなく、
結果にすべての価値を置き、
Aさんの例も、
合格したから意味がある、
と解釈してしまう。
<編集後記>
あいまいに耐える力が、
なぜ、人生に役にたつのか?
それは、
その力を持っていると、
不安やイライラに耐え、
マイナス思考に
陥らずにすむからです。
もっと言うと、
精神疾患にならずにすむ、
あるいは、
なっても、回復しやすい、
とすら、言えます。
発作がおきるかどうか、
未来はあいまい…、
それに耐えられない
パニック障害の方の予期不安も、
軽減されます。
相手が自分に悪意があるかどうか、
相手のことは結局、あいまい…、
それに耐えられない
統合失調症の方の被害妄想も、
ひどくならずにすみます。
・・・
いかがでしたでしょうか?
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