2021/03/14
HSPとは何か⑧:あなたの「感じる」は優位機能?劣位機能?
さて、HSPのシリーズ、
8回目になります。
前回は、こちら↓
洋服選びにおける、
アーロン博士と、
架空の女性Aさんとの比較から、
HSPの「繊細さ」における、
オーバーフロー型と、
拒否反応型とを、
区別しました。
今回は、
それを区別する意義について、
深掘りしてみましょう。
このHSPのシリーズの、
一つのハイライトになります。
・・・
まず、
最近の2回分の流れを、
簡単に整理します。
アーロン博士の場合、
婦人服という対象についての
「感じる」は、
「開発されている」。
でも、
「考える」「動く」が
不十分にしか
「開発されていない」。
だから、
「オーバーフロー型」の
「繊細さん」になってしまう。
・・
架空の女性Aさんの場合、
婦人服という対象についての
「感じる」は
「開発されていない」。
だから、
「拒否反応型」の
「繊細さん」になってしまう。
でも、
「考える」「動く」は
一定以上には
「開発されている」。
だから、
「感じる」が
「開発されている」
紳士服という対象についてであれば、
不適応は起こさずにすむ。
・・・
むむむ・・・
ややこしいか・・・。
スッと、頭に入らない場合は、
すみません、もう一度、
読んでみて下さい。
・・・
この文章を
精神科医のユングが
読んだとすると、
私(ユング)は、
ある一つの人間の機能が
「開発されている」場合、
その機能を
「優位機能」と呼び、
※優勢機能、と訳される場合あり
「開発されていない」場合、
その機能を
「劣位機能」と呼んでいる、
※劣勢機能、と訳される場合あり
とコメントするでしょう。
放っておくと、
ユングはどんどん、
私の性格論では、
人の心理的機能を、
思考と感情、その
どちらが、優位で劣位か、
直観と感覚、その
どちらが、優位で劣位か、
それに、
内向的、外向的、
という区別を加味して、
人の性格を8つに分類する
タイプ論、というものを
考案したわけだが・・・、と
講義が続くでしょう。
このシリーズの中では、
その部分には踏み込まず、
優位機能、劣位機能、という
考え方のみを、拝借しましょう。
・・・
平たく言えば、
優位機能とは、得意、
ということで、
劣位機能とは、不得意、
ということ。
優位機能であれば、
その機能を
しっかり自覚して、
自分でコントロールすることが、
しやすく、
社会的にも適応しやすい。
劣位機能であれば、
その逆、つまり
無自覚なまま、
コントロールがしにくく、
社会的にも適応しにくい。
学生時代の、
いろいろな学科の
得意、不得意を思い出すと、
わかりやすい。
数式を見ただけで、
気持ちわるくなる人と、
日本語よりもスラスラ
頭に入ってくる人と。
数学を理解する
という機能について、
前者では劣位機能、
後者では優位機能になっている、
ということです。
・・・
こんな用語が、
何の役に立つのか?
ユングがタイプ論で
伝えたかったことの一つは、
人が成長するとは、
劣位機能を自覚して、
自分でコントロールできるように
なることだ、
という点です。
これは、必ずしも、
劣位機能を、
優位機能と言えるぐらいぐまで
パワーアップせよ、
ということでは、ありません。
数学が苦手な人が、
練習して得意になれ、
という単純なことでは、
ありません。
・・・
劣位機能を自覚するとは、
まず、それが
劣位機能だということを認める、
なかったことにしない、
ということ。
次に、それが
劣位機能であることの、
自分の人生における意味について
十分、理解すること。
それを理解するためには、
ある程度、その機能の
パワーアップのための修練に
エネルギーを投入する時期も
必要でしょう。
場合によっては、結果的に、
劣位機能が、
優位機能といってよいぐらい
パワーアップすることも、
あるでしょう。
いずれにせよ、
その格闘を通じて、
その意味が、自ずと
わかってくる場合が多い、
ということです。
そして、最後は、
その劣位機能と自分とが
どう、折り合いをつけて
人生を渡っていけばよいか、
それが、腑に落ちること。
これが、できた時、
劣位機能を
自分でコントロールできるようになった、
と言ってよいでしょう。
それが、人としての成長だ、
ということです。
・・・
さて、
ユングのそのような
意図をくんだ上で、
アーロン博士と
架空の女性Aさんの例に
もどります。
・・・
アーロン博士の場合、
婦人服という対象についての
「感じる」は、
優位機能。
また、
西洋近代美術や音楽、
文学などへの「感じる」も
優位機能。
でも、「考える」「動く」は、
劣位機能。
だから、
「オーバーフロー型」の
「繊細さん」だった。
でも、論文執筆という
表現活動を通じて、
劣位機能を鍛えた結果、
人として
成長することができ、
結果的に、
自分の半生の生きざまを
HSPとして概念化し、
同じ生きにくさを抱える人々へ
希望を与えることができた。
・・
架空の女性Aさんの場合、
婦人服という対象についての
「感じる」は
劣位機能。
だから、婦人服売り場では
「拒否反応型」の
「繊細さん」になってしまう。
でも、
「考える」「動く」は
優位機能。
だから、
「感じる」が
優位機能となれる
紳士服という対象についてであれば、
不適応は起こさずにすむ。
・・・
さて、ここからが、
今回の、本題です。
Aさんは、
自分の劣位機能について、
どのように向きあえば、
人として、
成長できるでしょうか?
婦人服という対象については、
「感じる」が
劣位機能となってしまう
Aさん。
おそらく、
性同一性障害の特性を持つ
Aさんの場合、
婦人服について、
紳士服と同じくらい、
興味を持って接することは
難しいかもしれません。
婦人服に対する
拒否反応は、
続くかもしれません。
でも、その
「感じる」の
劣位機能を、
なかったことにせず、
紳士服との反応の違いにも
目を向けつつ、
Aさんのペースで、
自分の、
からだの性と
こころの性とのギャップについて、
そのようなギャップをもつ
他の人たちの状況について、
そのようなマイノリティの方たちの
社会の中での立ち位置の現状について、
知り、考え、感じて、
それでも、
自分らしさを表現しつつ
生きていくことを選択する、
そのようなプロセスを経て、
Aさんは、きっと、人として
成長していくことが
できるでしょう。
・・・
このAさんが、
自分はHSPなんだ、
※特に、原型HSP(未熟形)
と自分を納得させたとしたら、
どうなるでしょうか?
婦人服という対象について、
「感じる」が
劣位機能ではなく、
実は、
優位機能であって、
自分は
「オーバーフロー型」の
「繊細さん」なんだ、と。
そして、
婦人服売り場で
めまいと吐き気で倒れてしまう自分は
「繊細さん」だから、
しょうがいない、と。
そして、
「考える」「動く」は
優位機能なので、
向き合う
劣位機能が、見当たらない。
自分はHSPだ、と
思い込むことで、
そう、なったとしたら?
Aさんは、
自分の、
人として成長する機会を、
自ら、閉ざしてしまうことになる、
そういう訳です。
つまり、
自分はHSPだ、と認識することで、
自分の中の、ある機能について、
ほんとうは、劣位機能なのに、
それが、優位機能だと
誤認する結果になるなら、
有害だ、
といことです。
・・・
HSPが気になる時、
Do:
自分の「感じる」は、
何を対象にした時、
優位機能となるのか、
劣位機能となるのか、
まず、それを
正確に把握する。
Don’t:
自分の「感じる」が、
ある何かを対象にした時、
ほんとうは劣位機能で
拒否反応型になるのに、
それを
優位機能で
オーバーフロー型だと
誤認する。
いかがでしたでしょうか?
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