2021/08/30
PSMのための雑談との付き合い方⑮:雑談の「世間話タイプ」への対策 その1
さて、
雑談についてのシリーズ、
今回は、15回目になります。
前回は、こちら↓
前回も、前田さんのカウンセリングを
続けながら、
会話のボトルネック、
1:入力
2:イメージの構成
3:リアクションの構成
4:出力
のうち、
4:出力、について
コーヒードリップのワークなどを
紹介しつつ、お伝えしました。
今回は、前田さんから替わって、
引田さんとの
カウンセリングです。
ゴミ出しのとき、
近所のおばちゃんとの挨拶が
死ぬほどイヤな、
うつ病で、10年以上
引きこもりが続いている
男性の方でしたね。
・・・
まずは、
引田さんの苦痛のありどころを、
このシリーズでお伝えしている
内容を踏まえて、
整理することから、始めました。
小椋:
引田さんが感じる、
このうっとうしさは、
どこからくるのか?
近所のおばちゃんは、
引田さんに、挨拶、というかたちで、
雑談を仕掛けてきているわけですが、
それって、何を目的にしているのか?
放っておいてくれ!と思うのに、
なぜ、放っておいてくれないのか?
引田さん:
わかりません・・・。
うっとうしいだけです・・・。
小椋:
雑談の、4つの役割、
覚えておられますでしょうか?
1:世間を維持する役割
2:相手へのおもてなしの役割
3:ブレーンストーミングとしての役割
4:ストレスのはけ口としての役割
でしたね。
おばちゃんは、
1:世間を維持する役割、
これを期待して、
雑談を仕掛けてくるわけです。
引田さん:
自分はぜんぜん、
それ、したくないですが・・・。
小椋:
そう。
でも、おばちゃんは、したい。
自分の安心のため、
自分の近所に、
自分の価値観を逆なでする人が
いないよな、
それを、確認するために、
当然、無自覚ですが、
雑談を、仕掛けてくるわけです。
小椋:
いやな言い方をすると、
踏み絵、ですね。
引田さん:
???
小椋:
挨拶から入る雑談を仕掛けて、
どういう反応をするかチェックする、
それが、目的、つまり
踏み絵。
引田さん:
この近所という世間、
その価値観に沿っているかどうか、
ということ?
小椋:
そう。
だから、近所なんていう世間、
関係ない、と引田さんが思うなら
おばちゃんの挨拶、
無視する、という対応でよい。
引田さん:
そう、したいですが・・・。
小椋:
そう、したいが・・・?
引田さん:
そうすると、多分、
よけい、ややこしくなる、
というか、あの人は、
あーだこーだと、
ぺらぺら近所に言い回ると
思うんです、そういうこと
別の近所の人と言っていたから・・・。
小椋:
そういうシステムなんです、
世間が。
引田さん:
わかります、
そう、思います。
小椋:
つまり、
世間とは関わりたくないが、
だからといって無視すると
世間の方から排除の動きに
出てくる、それはそれで
困る、ということ。
・・・
引田さん:
そういうことになりますね。
でも、どうすればいいんでしょうか?
こんなおばちゃんと
かかわりたくないと思いながら
ニコニコ、おはようございます!と
言えればいいんでしょうが、
それ、ちょっと・・・。
小椋:
無理ですか?
引田さん:
・・・。
小椋:
おばちゃんは、
この近所という世間、
それを逆なでする人ではない、
という安心材料が欲しいだけなんです。
挨拶、というアクションに対して、
敵対心はないよ、
というメッセージに解釈できる
引田さんの反応を求めているだけ。
引田さん:
確かに、
そうなのかもしれません。
小椋:
実際、引田さんも、
かかわるのはいやだが、
敵対したいわけでは
ないですよね、世間と?
引田さん:
勝ち目、ないです、
敵対しても(苦笑)。
だから、敵対したい
わけではない。
小椋:
いま、引田さんの中に、
二人、いるわけです。
世間とかかわらず、
引きこもっていたい
という人が、一人。
そして、世間と
敵対したいわけではない、
という、もう一人。
自分の中に、
二人いる、という感覚、
これ、ポイントです。
引田さん:
どう、ポイントなんですか?
小椋:
後者の人に、
おばちゃんへのリアクションを
演じてもらう。
二人いれば、できます。
引きこもっていたい、
その人、一人しかいない場合は、
その人に、
おばちゃんへのリアクションを
引き受けてもらうのは、
かなり、ハードルが高い。
引田さん:
それ、無理です、
どう考えても。
小椋:
だから、
世間と敵対したいわけではない、
その、もう一人が、
引田さんの中にいる、
それが、ポイントなのです。
引田さん:
ふむふむ。
小椋:
こんな喩えは、どうでしょう。
引田物産、という会社があって、
引田さんが社長。
社員は二人。
一人は、誰とも会いたくないが、
社内で仕事はできる。
もう一人は、
本当は、同僚と一緒に
社内で仕事をしたいが、
そうすると、会社がつぶれるので
しぶしぶ、営業で
外周りをやっている。
そんな状況で、
引田物産は何の仕事をしているか
外からわかりにくくて不安だと
町内会で議題になったので、
ご挨拶に、町内会長が訪問しにきた。
引田さん:
それが、おばちゃん、
ということですね。
小椋:
そう。
引田物産の社員は
二人いて、
そのうちの一人の
営業マンに、
対応をさせればよい。
引田さん:
そんな会社なら、
確かに、それでよさそうですね。
小椋:
だから、
引田さん自身が、
引田さん、たった一人、ではなく、
自分は、
引田物産という会社で、
かつ、その社長で、
部下が二人いる、
というふうに、
自分の認識を変えてみる、
という提案になるわけです。
引田さん:
ふむふむ。
小椋:
話は大きくなりますが、
近代の学校教育が始まって以降、
人間は、一枚岩であるべきだ、
という価値観が押しつけられています。
一人の人間は、
表裏のない、一貫した、
一人の人間であるべきだ、
という。
でも、実情は、
そうでは、ないですね。
会社の喩えの方が、
実情です。
ポイントは、
どれだけ、社長が
部下と強調して会社を運営できるか、
という点です。
そこが、
社会の中での適応のレベルに
関係してきます。
引田さん:
まるで、多重人格ですね(苦笑)。
小椋:
そう。
多重人格という病名がつく場合は、
社長のコントロールが
できていない場合に、そうなります。
引田さん:
だから、コントロールできていれば、
いろんな自分が、
会社の中にいていい、
ということですね?
小椋:
そういうことです。
あ、そろそろ、時間です。
具体的な対策は、
次回、相談しましょう。
引田さん:
はい。
・・・
雑談が苦手で困っている時、
Do:
かかわりたくない
世間との雑談が
避けられない場合、
まずは
自分の中にいる営業マンを
自覚する。
Don’t:
自分の中には
世間とかかわりたくないと
頑なに思っている、
その自分しかいないと
認識してしまう。
いかがでしたでしょうか?
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