2022/06/27
「毒親」とは何か⑧:精神疾患に由来する隷属化状況の具体例
さて、
毒親のシリーズが続きます。
今回は、第8回目。
前回は、こちら↓
架空のB乃さんの具体例を紹介して、
隷属化構造(ESO)という用語を
導入しました。
今回も、同じく架空の
C美さんをご紹介します。
A代さん、B乃さんと、
どこが違うのでしょうか?
・・・
C美さん、39才、女性。
高校を卒業後、地元の大手企業に
営業として就職しました。
25才で同僚と結婚し、
寿退社。
27才で長女(C子さん)を出産後、
翌年には次女を出産。
でも、実は
C子さんを出産後、産後うつになり
精神科に通院したことがあります。
次女を出産する頃には
通院も要らなくなっていました。
そんなC美さんですが、
C子さんが5才、
下の妹が4才のころ、
二人の育児の負担が
大きくなったこときっかけに、
躁状態を発症してしまいました。
夜通し、ミシンに向かい
幼稚園で必要なエプロンなどを
こりにこったデザインで
用意しようとしたり、
通販で高額のバッグを
何個も買ったり。
保育園のママ友へ、
正論だが上から目線の
意見を言い放って
誰も寄りつかなくなったり、
政治家になると宣言して
後援会に足繁く通ったり。
そんな状態が2ヶ月も続くため
夫から精神科の受診をすすめられました。
夫に悪態をつきながら、
しぶしぶ、C美さんは
精神科を再受診しました。
診断は
双極性感情障害(躁うつ病)。
C美さんは
なんとなく予感はしていましたが
改めて診断を告げられて
ショック。
翌日から激しい
抑うつ状態に陥りました。
以後、
抑うつ状態が数ヶ月続いた後、
ほとんど気分がニュートラルな
期間のないまま、
躁状態が一ヶ月程度続き、
それを延々と反復する病状に
陥ってしまいました。
現在、C美さんは、
2週間に一回、精神科に通院しながら、
ご主人と、C子さん(12才、中1)、
そして次女(C子さんの妹)との
四人暮らしを続けています。
・・・
C子さんの小学校の思い出は、
入学式に遅刻したことから
始まります。
C美さんがうつで寝込んでいると、
妹の世話は全部、
自分がするしかないからです。
妹がお腹が痛いとか言い始めて、
なんだかんだしているうちに
入学式に間に合わなくなったのです。
もちろん、C美さんは、
布団で寝込んでいます。
お父さんは朝が早いので
会社に行っていて
手伝ってはくれません。
一人だけの、
遅刻した上での入学式。
恥ずかしいやら
悲しいやらで涙が
止まりませんでした。
・・・
C美さんが
うつを脱して躁状態に
移り始めると、
C子さんには
すぐわかります。
まず、顔色がよい。
よく、しゃべるようになる。
そんなにしなくてもいい
掃除をやたらするようになる。
宿題やったのとか、
言われなくてもやっていることを
いちいち言われて、
そのテンションもへんに高いため、
正直、うっとうしいだけ。
そのうち、だんだんと
ニ週間ぐらいかけて、
C美さんに
イライラが、混じってくる。
まず、些細なことをきっかけに
お父さんへの罵倒が始まる。
給料が少ない!
いつになったら
係長になるんだ!
C子さんは、
また始まったと
からだが震え始める。
その声だけでも
ビクッとするけど、
もっと怖いのは、
次はまた
うつがくると、
わかるからです。
・・・
うつが入り始めると
グッと、トーンが
暗くなります。
もう死ぬしかない、
とかつぶやいたりする。
あんた(C子)なんか
うまなきゃよかった!
と捨て台詞のように
吐き捨てられることもある。
小学校の6年間、
ずっとこんな調子だから
もう自分は慣れたぞ、と
C子さんは、頭では思っているが、
言われるたびに、
なんだかわからない傷が
同じところで、深くなっていく
感じがする。
でも、
去年の時よりはマシか・・・
包丁を持ち出されて、
一緒に(心中で)死のうと言われて
肩を掴まれた時は、
もう、心臓と息が止まった・・・。
でも、なぜいつも
自分なんだろう、
妹には絶対、そんな感じには
ならないのに・・・。
・・・
C子さんは、
学校を休むとまた何を
C美さんに言われるかわからないから
とにかく、
自分の気持ちや体調など無視して
登校は続けました。
家事も、同じ理由で
続けました。
底抜けの、真っ暗な感じに
襲われることもあります。
もう、出る涙も
なくなった感じです。
でも、稀に、
C美さんから、
ごめんね、とポツリと
つぶやかれることがあります。
C子さんは、ほんとうは
お母さんが大好きでした。
でも、もう、
何がなんだか、わかりません。
考える力もありません。
自分が何をしたいのかも
わかりません。
お父さんは、
あまり、頭の中にありません。
働いて、お金を稼いで
家に入れてくれるだけ、
それでいい、そんな気分でした。
妹は、
嫌いです。
でも、世話は続けています。
自分って、
何なんだろう・・・。
・・・
さて、皆さん、
いかがでしょうか・・・。
C子さんは
中1の時点ですでに、
かなりの心身のダメージを
負っています。
それでもふんばって、
なんとか、学校を出て、
一人暮らしを初めて、
彼氏さんもできて・・・
そんな中、
会社のパワハラをきっかけに
うつ病になって、
精神科を受診して・・・
背景を探ると
壮絶な学童期が判明して、
詳しくきくと、
誰にも相談したことないが、
悪夢や、フラッシュバックもあって、
ものすごく
自己肯定感が低くて、
虚無の感覚が強くて、
彼氏さんの前では
感情コントロールができない・・・、
複雑性PTSDの診断が
追加される・・・、
C子さんの未来には、
そんな風景が
待っているかもしれません。
・・・
テーマを
C美さんに、戻しましょう。
C子さんに、
このような隷属化を強いてしまった、
C美さんは、
A代さんのような
ESPでしょうか?
B乃さんのような
ESOでしょうか?
C美さんのケースは、
それらとは区別して、
精神疾患に由来する
隷属化状況、
と言語化したほうが
よいだろう、と提案します。
つまり、
C美さんがC子さんを
隷属化している状況の、
その要因を、
C美さんの個人の資質にに求める、
ということが、馴染まない、
というこです。
双極性感情障害が、
C美さんに、
C子さんを隷属化することを
強いた、
と言うことです。
つまり、
C美さんは、
ESPでも、ESOでもなく、
C美さんの
双極性感情障害により、
C美さんとC子さんは、
精神疾患に由来する
隷属化状況に
二人して、陥った、
と言語化することを
提案します。
・・・
ただし、
双極性感情障害を発症した母が
子との関係で、常に、
隷属化状況に至るか、というと
そのようなことは
ありません。
つまり、
C美さんにも、
個人的資質において
何らかの課題があった可能性は
残ります。
つまり、
精神疾患に由来する
隷属状況、
その中に、
ESPや、ESOが
混在している場合は、
あるでしょう。
ただし、
これが重要なメッセージですが、
毒親が関与する
隷属化の状況を、
見切るためには、
ESP、
ESO、そして
精神疾患に由来する
隷属化状況、
この3つを念頭に置くことは
整理に役立つだろう、
ということです。
・・・
毒親対策について
取り組む時、
Do:
隷属化の状況を見切るために、
ESP、
ESO、そして
精神疾患に由来する
隷属化状況、
この3つの整理の仕方があることを
知る。
Don’t:
ESPやESOを
精神疾患だと誤認する、
あるいは、
精神疾患に由来する
隷属化状況を、
親の
ESPやESOが要因だと
誤認する。
いかがでしたでしょうか?
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