ベンゾジアゼピン系眠剤を減薬・中止することのメリット
さて、今回は、
眠剤についてのお話です。
不眠でクリニックを
受診される方で、
以前に眠剤を処方された
経験がある場合、
小椋が、
「ふつうでない」眠剤を
提案すると、
「ふつうの眠剤では
ダメですか?」と
よく、聞かれます。
ここで言う、
ふつうの眠剤とは、
マイスリー、
アモバン、
レンドルミン、
ロヒプノールなどの、
ベンゾジアゼピン系、
およびそれに類する、
睡眠導入剤、のことです。
確かに、
飲んだ最初の日から、
わかりやすく、効きます。
これは便利!
だから、精神科に限らず、
ふつうに、
内科、外科、
産婦人科など、
あらゆる科で、
処方されてますね。
でも…
小椋としては、
他に選択肢があるなら、
なるべく、
処方したくない、
そんな、お薬なのです。
なぜでしょうか?
・・・
①:慣れがくる
だんだん、効きが悪くなる。
これ、
耐性(たいせい)と言います。
その結果、
長期に連用すると、
だんだん、増量するハメになる。
増量には限界があります、
薬剤ごとに、
上限が決まっているから。
じゃあ、どうする?
別の眠剤を
追加していくことになり、
個人差はありますが、
数年後には、2〜3種類の
同じような眠剤を飲んでいる…
そんな未来が、
小椋には見えてしまいます。
・・・
②:やめにくい
長期に連用すると、
脳が、
その眠剤を前提に、
機能し始めます。
だから、ある日、
急にやめると、
100%、眠れません。
反跳性不眠(はんちょうせいふみん)
と言います。
徐々に、減薬すれば、
やめることも、可能ですが、
ベンゾジアゼピン系は、
かなり、ハードル、高いです。
ちょっとの減薬でも、
「おかしい…眠れん…」と
脳は気づいてしまいます。
で、もとの量を
飲み続けざるを得ない…
・・・
もちろん、
「自分にはレンドルミンが
一番、あっている」と、
長年、それ一錠で、
うまく睡眠をとって、
問題なく、社会生活を
営んでいる方、
多く、おられます。
軽症の不眠症の方に
多いですね。
実際、小椋も、
そのような方、
クリニックで、サポートしています。
慣れがこなくて、
やめる必要もないなら、
確かに、OKです。
ただ…
・・・
③:自然な睡眠の質ではなくなる
一見、
わかりにくいのですが、
実は、
ベンゾジアゼピン系では、
この現象が、起きています。
具体的には、
レム睡眠:
夢をよく見る浅い睡眠
徐波睡眠:
深い眠りの時の睡眠
この両者が、
健常者の睡眠と比べて、
減ってしまうのです。
レム睡眠が少ないと、
確かに、
夢見が少なくなるメリットは
あるでしょう。
でも、レム睡眠は、
記憶の定着を促進させるなど、
大切な機能をもっています。
ベンゾジアゼピン系では、
この機能が低下します。
一方、徐波睡眠は、
うつ病で少なくなる、
とも言われています。
うつ病と、
睡眠の脳波との関係は、
かなり複雑で、
ベンゾジアゼピン系で、
徐波睡眠が減ると、
うつ病になる、
などと、
単純に言えませんが、
徐波睡眠が減っている状態は、
正常な睡眠ではない、
とは言えます。
この③は、
我々PSMにとって、
どんな意味があるのでしょうか?
・・・
ベンゾジアゼピン系の
睡眠導入剤の内服で、
一応、睡眠は取れていて、
病状も安定している方が、
それを減薬、中止し、
より自然な
睡眠の質を得ることができたなら、
日中のパフォーマンスがさらに
改善される可能性がある、
ということです。
自然な(正常な)睡眠は、
脳の自然な(正常な)活動の、
大前提だからです。
・・・
もちろん、
減薬して、不眠になるなら、
元も子もありません。
徐々に減薬し、
自分自身の力で眠れるようにするか、
睡眠の質を変えない、
睡眠のための別の内服に
切り替えるか。
最近は、
ベルソムラ、
ロゼレム、など、
切り替えの候補が出てきています。
・・・
さて、
ベンゾジアゼピン系の
睡眠導入剤との
付き合い方を考える時、
Do:
減薬・中止によって、
睡眠の質が
改善される可能性があることを知る。
Don’t:
睡眠時間が確保でき、
めだった不具合もないからという理由で、
減薬を検討する対象から除いてしまう。
または、
こんな薬は飲んではいられないと、
急に断薬し、不眠になる。
いかがでしたでしょうか?
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