ブログ

ブログ

2017/12/13

統合失調症とは何か:症状を理解するためのヒント

今回は、統合失調症という
精神疾患についてのお話です。

統合失調症は、
躁うつ病と合わせて、
二大精神病、と言われています。

精神病とは、
現実と非現実の区別ができなくなる、
それほどに、症状がきつい、
そのような精神疾患を言います。

統合失調症の場合、

自分の悪口を言う声が聞こえる、
周囲がすべて敵に感じられる、
などの症状が典型的です。

また、
自分の秘密が他人にもれている、
自分が他人に操られている、など、
自分と他人の境界が、あいまいになる、
そのような症状も、典型的です。

いずれにしても、
この体験、すごく、怖いです。

そんなことないよ、
大丈夫だよ、とやさしく声かけしても、
焼け石に水、です。

そして、
この症状に左右されて、
外出できない、誰にも会えない、
あるいは、
相手に対して反撃でる、興奮する、
などの行動に出てしまいます。

・・・

いままでふつうに
大学に通っていた息子さんが、
急に、この状態になって、

嫌がる本人をなだめすかして、
精神科を受診させ、
その病名を告げられた、
ご家族…

このような状況、
小椋も何度も経験してきました。

何が起きているのか?
本人も、ご家族も、
不安でいっぱいです。

どう、説明したら、よいのでしょうか?

・・・

現代の精神医学では、いまだ、
統合失調症の原因とメカニズムを
明快に説明することは、できません。

なので、
次のような例えを使って、
説明をする場合が多いですね。

ヒトは、外界の情報を、
そのまま受け取っているのではなく、
そのヒトなりの、
脳のフィルターを通じて、
受け取っています。

このフィルターが、
うまく機能していると
自分に必要な情報だけが、フィルターを通過し、
不必要な情報は、遮断されます。

でも、
この脳のフィルターの目が、
荒くなると、
不必要な情報まで、通過してしまいます。

別の言い方をすると、
過敏になる、とも言えますね。

その結果、脳は、
過剰な情報の処理に追われ、
疲れ切ってしてしまいます。

・・・

この状態を、
さらに例えを使って、
イメージしてみましょう。

コウモリって、
超音波を出しますよね。

その音は、我々の耳の機能では、
感知できません。

でも、その音が…
というか、コウモリの声が…
感知できたとしたら?
https://www.youtube.com/watch?v=MKhv47rHtIg
(バットディテクターという装置を使った動画)

これ、かなり、イヤですね…

そう、なんです。
脳のフィルターが過敏になると、
一事が万事、こんな感じです。

もっと、
イメージをふくらませましょう。

例えば…

他府県で起きた土砂崩れ。
その振動が、感知できるとしたら?

それぐらいに過敏な状態なら、
表の通りを走行する車両の振動なんて、
大爆撃のように感じるでしょうね。

さらに…
外界だけではなく、
自分の内界に関する
脳のフィルターも、荒くなったら?

無意識の奥にしまったまま、
もう、夢にもでてこなくなった記憶が、
白昼にまざまざと、感知できるとしたら?

そう…おそろしい…

この過敏な状態の中で、

他人の声や、
自分のこころの中の声が、
幻聴として聞こえ…

道行く他人が敵に感じられ…

自分と他人の境界が
わからなくなるのです。

だから、統合失調症の方は、
ものすごい情報の渦の中で、
緊張のあまり、固まるしか、
術がないのです。

・・・

このような例えを使って、
ご本人や、ご家族に、
何が起きているか、
説明するようにしています。

でも、最近の脳科学の進展で、
このフィルターの機能が、
デフォルトモード・ネットワークという、
脳の特定の回路の機能として、
解明されつつあります。

この例え、あながち、
勝手な解釈では、なさそうですね。

・・・

統合失調症の、この病状に、
抗精神病薬を用います。

その作用は、例えるなら、

その荒くなったフィルターの目を、
一時的に、埋める…

そして、

過敏と情報過多を修正する、
と言えるでしょう。

抗精神病薬を適切に使うなら、
過敏による脳のダメージは
かなり、防げます。

だから、50年前と比べて、
最近の統合失調症は、
軽症化してきた、
とも、指摘されています。

それでも、日本では、
受診していない患者さんを含め、
推定80万人

生涯で発症する方は、
人口の0.7%、と言われています。

・・・

さて、
統合失調症の病状について、
知る必要が生じた時、

Do:
フィルターが荒くなっている、
だから過敏になっているんだ、と
想像力を働かせ、
コミュニケーションをとる努力を続け、
共存を目指す。

Don’t:
想像力を働かせることをせず、
コミュニケーションをあきらめ、
全く理解できない人として接する。

さて、次回は、
当院に通院中の統合失調症の方で、
いままでの闘病生活をオープンにし、
YOUTUBE動画をアップしている方、
ご紹介いたします。
(もちろん、ご本人、了承の上)

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。