マイナス思考への対処法②:「ヘルシー思考」とは?
さて、
マイナス思考から脱出するための、
認知リテラシー、その2回目です。
前回は、
「考える」という知的作業を、
ゴールの設定
↓
情報収集
↓
判断
↓
結論
というステップに
整理しました。
これを、今後、
認知リテラシーの基本セット、
と呼ぶことにしましょう。
そして、
マイナス思考は、
この基本セットを、
いわば超特急で処理して、
短絡的に結論を出すことで、
省エネというメリットがあること、
状況によっては、
適応的な思考となる場合もあること、
だからこそ、
なかなか抜け出せない場合がある、
そんな特徴をザッと
見てきました。
・・・
今回は、
そもそも、マイナス思考ではない、
「ふつう」の思考とは、
一体、どんな感じなのか?
それを、見ていきましょう。
それって、
ポジティブ思考、
ということ?
何があっても、
前向きに考える、それが、
ポジティブ思考だとるすと、
確かに、その方が、
しんどくなさそうです。
でも、
何でもそうですが、
行き過ぎは、しんどくなります。
極端な例では、
躁状態の、
オレは何でもできるぞ、
という万能感、
それに支配された、
貯金を空にしての、
家族の大反対を無視しての、
手当たり次第の、
株式への投資、という結論。
これだって、
認知リテラシーの基本セットを
超特急で処理した結果の、
適応的でない思考です。
・・・
では、
「ふつう」の思考とは、
何か?
極端にマイナスでもなく、
極端にポジティブでもない、
バランスのとれた思考。
これを、
「ヘルシー思考」と呼びましょう。
それって、
何と何との、バランスが
とれているのでしょうか?
・・・
初めてうつ病にかかった、
架空の会社員、
Mさん(45才、男性)の、
自宅療養を受け入れるまでの
経過を例に、
一緒に考えてみましょう。
話をすすめるにあたって、
図があった方がわかりやすいので、
用意しました。
このブログのアイキャッチ画像を
参照下さい。
この図を、認知リテラシーの
基本シェーマ、と呼びましょう。
ヒトの四つの機能、
信じる、
考える、
感じる、
動く、を縦に並べて、
考える、の部分に
基本セットの流れを添えて、
認知リテラシーの中での、
相互作用を、矢印にしてます。
・・・
さて、Mさんです。
役職がついて、ここ2年、
通常業務に加えて、
部下の采配もふるい、
自分でも無理をしていると自覚あり、
ついに、ある朝、
布団からでられず、欠勤。
心療内科を受診し、
うつ病と診断され、
自宅療養をすすめられたが、
拒否。
理由は、
子供の学費や住宅ローンがあり、
働かないなど、あり得ない、と。
この時点での
基本セットを、
確認してみましょう。
ゴールの設定は、
勤務継続か自宅療養かを
決めること。
でも、
収入がなくなることへの恐怖
(=感じる)が、
大きく影響を与えています。
そのため、
自宅療養をした場合の、
給与の保障に関する
情報収集に、
全く注意が向きません。
結論ありき
(=勤務継続)
となっています。
そこを担当医が指摘し、
しぶしぶ、総務に確認をすると、
3ヶ月間は、
10割で給与が出る、と。
それなら、
なんとかなるか(=判断)と、
収入がなくなることへの恐怖は、
軽減。
でも、次は、
診断書にうつ病と書かれることに、
抵抗がある、と。
うつ病は、甘えているヤツがなる病気。
自分がなる訳がない。
この信念(=信じる)が、
大きく影響を与えています。
そのため、
いま、自分に起きている
体調の変化について振り返る、
という情報収集に、
全く注意が向きません。
結論ありき
(=勤務継続)
となっています。
そこを担当医が指摘し、
過労により、
脳という臓器の機能が低下し、
集中力低下、業務のミス、
勤労意欲の低下、食欲低下、
不眠…など、うつ病では
さまざまな症状が出る。
責任感のある方の方が
なりやすい、その意味では、
Mさんは典型的、とも伝えた。
Mさんは、
ショックを受けつつも、
自分の状態はうつ病なのだと、
受け入れざるを得ず(=判断)、
自分の信念(=信じる)を修正し、
自宅療養に(=結論)。
すると、
その行動(=動く)が、
感情(=感じる)に変化を与えた。
ここ数年来、
味わったことのない、
肩の荷がおりたような、
安堵感を自覚した。
すると、
いかにいままで自分が
無理をしてきたか、
走馬燈のように、
思い出された。
(=振り返りという情報収集)
そして、
しっかり療養しようと、
決意を新たにした(=結論)。
・・・
いかがでしょうか?
Mさんには、
どんなマイナス思考が、
あったと、思いますか?
これは、次回に、
整理してみましょう。
また、
Mさんが最終的に
到達した結論は、
何と何とのバランスがとれた、
ヘルシー思考の結果か、
わかりますか?
これは、簡単に、
お答えしておきましょう。
四つの機能、
そのバランスを整えることのできる思考、
ということです。
感じる、
が猛威を振るう時、
それをなだめることができ、
信じる、
が暴君のように振るまう時、
それをいさめることができ、
動く、
に適切な指示を出すことができる、
そんな、思考。
それが、ヘルシー思考、
ということです。
Mさんの、
このシンプルな例でも、
すごく複雑に、
四つの機能が影響しあっている、
その様子が、
伝わると思います。
・・・
さて、
まとめましょう。
マイナス思考で困った時、
Do:
自分の現状を、
認知リテラシーの基本シェーマで
整理してみる。
特に、まず、
認知リテラシーの基本セットの
考え方に親しむ。
Don’t:
認知行動療法の
マイナス思考(自動思考)の
種類を覚えて、
それを自分にあてはめる、
それだけに終始する。
<編集後記>
長文で、ちょっと、
難しかったと思います。
ただ、志としては、
ふつうの認知行動療法が
うまくかみ合わない患者さんでも
柔軟に使える、
マイナス思考の修正のスキルを
用意したい、
そのモチベーションでやってます。
Mさんの例は、
認知行動療法をやりましょう、
といってやったのではなく、
結果的に、
同じような効果が出ている、
という例になります。
次回は、前述したように、
いわゆる、
認知行動療法の自動思考を、
認知リテラシー的に、
整理してみます。
いかがでしたでしょうか?
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