森田療法入門③:感情を体得するとは?
さて、今回も、
森田療法のテーマが続きます。
前回は、こちら↓
森田療法入門②:恐怖突入とは?
パニック障害の患者さんが、
森田先生の療養指導で、
発作の恐怖に自ら「突入」し、
精神交互作用の悪循環を断ち切り、
見事、障害を克服した、
実際のケースを、お伝えしました。
その荒療治は、
患者さんの「信じる」機能が
十分に発揮されたからだ、
とも解説しましたね。
今回は、そのケースを、
感情リテラシーの観点から
整理してみます。
患者さんは、仮に、
Aさん、としましょう。
・・・
実は、森田正馬は、
「感情の法則」として、
次の5つを挙げています。
※『神経質の本態と療法』より
※小椋が語句は一部修正しています
<①:感情は放任すれば消失する>
怒りも三日も経てばおさまる、
という例を森田先生は挙げています。
感情というエネルギーは、
元来、自然な経過で消失する、
ということです。
もちろん、その間、
その感情のエネルギーに
「耐える」ことができれば、
なのですが…。
Aさんの場合、
恐怖に「突入」して、
5分間、耐えた結果…、
おそらく、
恐怖の極限で、
睡魔が襲ってきたのだと思います。
ある種の、
生命体の防衛反応ですね。
この、天然の防衛反応も含めて、
恐怖という感情は、
放任すれば、消失したわけです。
<②:感情は行動に起こせば消失する>
これは、このメルマガで、
感情リテラシーとしてお伝えしてきたこと、
そのままですね。
ただ、問題なのは、
適切な行動か? ということ。
怒りの感情から、
相手に復讐したが、その後、
その行動に対する自責の念に
苛まれ続ける…、という不適切な例を
森田先生は挙げています。
飲酒や自傷行為など、
一時的には有効だが、
その場しのぎの解決にしかならない行動も、
不適切な例に含まれますね。
Aさんの場合、
あらゆる行動の選択肢を、
自ら、排除しています。
布団から飛び起きて、
森田先生を呼びに
夜中の町を駆け出すことも
できたでしょう。
もちろん、
助けを求めることは、
恐怖に対する行動として、
あり、です。
でも、それを続けるだけだと、
①は体験できない、
ということですね。
<③:感情は慣れれば消失する>
親に怒られ続けた子供が、いつしか、
親の注意に聞く耳を持たなくなる、
という例を、
森田先生は挙げています。
この例は、
それでよいかのか、わるいのか、
微妙ですが、
感情に関する真実ではあります。
「慣れる」の中身が、
麻痺、なのか、
キャパが大きくなったから、なのか、
その区別は、大切でしょう。
Aさんの場合、
麻痺、ではなく、
恐怖に対する、
Aさんのキャパが、大きくなった、
と言えるでしょう。
<④:感情は刺激と注目で増強する>
ケンカが次第にヒートアップする例を、
森田先生は挙げています。
怒りを表出すると、
自分の感情により注目することで、
その怒りが強くなる。
それを受けた相手も、
同じ悪循環が続き、
お互い、
怒りを刺激する状況が続く…。
この悪循環は、
精神交互作用の一部を、
構成していますね。
Aさんの場合、
最悪の姿勢を保ったまま、
動かない、何も発語しない…。
5分間、新たな刺激は、
何もない状態です。
発作を観察するように指示をされているので、
必ずしも、
不安、恐怖、という感情だけに、
注目しているわけではない。
だから、
Aさんの5分間は、
精神交互作用を起こしにくい
状態だったわけです。
<⑤:感情は経験することで体得される>
これは、森田先生が
強調しているところです。
こころもからだも含めた、
全身全霊で体験することで、
やっと、
ある感情について、
「わかった」と言える。
「わかった」という感触は、
そのまま、
だから「耐えられる」、
という感触に直結します。
これ、すごーく、
重要です。
Aさんのケースについて、
森田先生は、
次のようにコメントされています。
もしも事前に私が、
Aさんに対して、
発作を自分で起こそうとしても
決して発作はおきず、
5分もしないうちに寝てしまうだろう、
だから、安心してやってみてください、
などと伝えていたものなら、
決して、治療は
成り立たなかっただろう。
そのような状況では、
Aさんは、恐怖を
「体得」できなかったわけです。
・・・
森田療法に興味があるが、
親しみにくいと思った時、
Do:
感情リテラシーの
一つの実践方法だと理解する。
Don’t:
なんだか難しそう…
と食わず嫌いに終わる。
(前回と同じ)
いかがでしたでしょうか?
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