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2022/08/21

自己肯定感を上げるためのコツ⑤:自己効力感を感じる瞬間


さて、
自己肯定感をテーマにした
シリーズ、その5回目です。

前回は、こちら↓

前回は、
40才の男性会社員で
うつ病のために休職中の
Aさんに、

新しい担当医が
どんな療養の指導をしたかを
お伝えしました。

まずは、
睡眠と覚醒のリズムの
不安定さが原因だから、

動画は0時まででやめて、
布団に入ること。

そして、
散歩はやめる代わりに
日中、椅子に座った状態で
動画を見て過ごすこと。

さらに、
朝の不調の改善を
ターゲットとして
活動記録表をつけること、
でしたね。

その上で、
その指導がどのような意味で
自分軸になっているか、
それも、確認しましたね。

今回は、
Aさんのその後の経過を
見ていきましょう。

・・・

Aさんは、
担当医の指導内容に
実は、半信半疑でした。

でも、一応、
言われた通りにやってみて、
2週間後に、受診しました。

担当医が
記録表を確認すると、
確かに、
言われた通りに途中までは
やっていますが、

2週目のある日、
Aさんは、また
5000歩の散歩をしてしまって
翌日、寝込んでいる記録が
目につきました。

Aさん曰く、
どうしても復職を焦ってしまって、
散歩をした方が
早く回復するんじゃないかと・・・、
すみません・・・。

寝込んだ日は、これもまた
夜通し、布団に横になったままの
スマホの動画三昧が復活していて、

Aさん曰く、
ちょっと自暴自棄になってしまって、
すみません・・・。

担当医は、
正直に記録していることを
評価した上で、
崩れたらまた立て直して
やってきましょうと
助言しました。

・・・

その後もAさんは、
リズムを崩しては
立て直す、ということを
何回か繰り返しました。

転医から2ヶ月が経った
ある日の診察で、

活動記録表を見ながら
担当医がコメントしました。

Aさん、
この日を見てください。

朝の鉛のような
からだの重さが、
マシ、と記録があります。

この日も、そうですね。
この日も、そう。

これ、何が共通しているか
わかりますか?

これはいずれも、
その日までの4〜5日が、
しっかりリズムが
保てている、という
共通点がありますね。

つまり、
どういうことか
わかりますか?

Aさん:
つまり、リズムが
維持できていると、
朝の不調が、マシになる
ということでしょうか?

担当医:
そういうことです。

Aさん:
なるほど・・・、
リズムを維持することに
意味があるんですね・・・。

・・・

この日を境に、
Aさんはもう、
リズムを崩すことが
なくなりました。

朝の不調も
順調に改善していき、

皿洗いなどの家事も
できるようになりました。

転医から4ヶ月後には
少しの散歩なら
日課にすることが
できるようになって、

6ヶ月後には、
午後、週3日なら、
復職デイケアへの通所が
できるようになって、

8ヶ月後には
午前中から週5日
参加できるようになって、

10ヶ月後には
慣らし勤務からの復職に
たどり着くことが
できました。

・・・

この期間中、
Aさんは、
ちょっとリズムが乱れると
朝の不調が
微妙にもどってくることを
丁寧に自覚することも
できていました。

また、
不安にかられて
ネット上の情報をあさることも
なくなりました。

復職デイケアで
他の利用者と交流する中で、

同じうつ病の診断でも
いろいろなパターンが
あるんだな、と気づいて、

自分には、
まず何よりも
リズムの維持が重要なのだ、と
改めて自覚した、
とのことでした。

担当医が、
復職おめでとう、と
伝えた後に、

初診の時は、
自己肯定感、ゼロと
ため息をつかれていましたね、
と振り返ると、

Aさんは、
苦笑しながら
確かに、そうでした・・・、

でも、今はちょっと
手応えがありますね、
この10ヶ月間、
自分なりに、やった感、
あります。

なんというか、
肚(はら)をすえる、というか
そういうの、
大事ですよね。

なんだかんだ言って、
活動記録表、
効いてますね、
メンドウですが(苦笑)

それ、ないと、
自分のことって、
実際、あまり
わからないですよね。

先生に言ってもらわなければ、
リズムと
朝の不調のつながり、
自分では
わからなかったと思います。

あの日のこと、
よく覚えています。

人間って、
現金なヤツですよね、
こうすれば、
こうなると分かったら、
メンドウでも
やりますよね。

やっぱり復職、
うれしいです、お陰さまです、
ちょっと、自信には
なったかと思います・・・。

・・・

さて、皆さま
いかがでしょうか。

心療内科を扱った
マンガのように
できすぎかもしれませんが(苦笑)

療養の中での
他人軸自分軸

その使い分けの実際を
イメージできれば
それで十分です。

つまり、
他人軸の評価を
上げようとしたら、

そのために必要な
自分軸をしっかり持っていないと
空回りになるよ、

そして、
他人軸の評価アップに
つながらない期間中、

孤独で不安だが
自分軸に沿って
コツコツやれると、

他人軸の評価アップに
つながるよ、
というまとめになります。

・・・

これって実は、
精神科の療養に限らず、

何かしらのスキルの上達を目指す
あらゆる修練の過程で、
まあ、必須、の
コツでしょうね。

他のジャンルの
ベタな例ですが、
例えば、

『ベスト・キッド』という
映画をご存知でしょうか?
(1984年、米国)

転校生のダニエル少年が
同級生にいじめられるが、

そこを空手の達人である
ミヤギという老人に助けられて、
彼に空手を習うようになる。

でも、させられるのは
ワックスがけや
ペンキ塗りなどの雑用ばかり。

ワックスがけは、
円形の両腕の反復動作。

ペンキ塗りは、
直線的な、それ。

ある日、もうやめる!と
ダニエルは
ミヤギにキレたが、

ここで初めて、
ミヤギが格闘家の顔になる。

ミヤギは
ダニエルに相対して、

雑用で使った、
上肢の反復動作、四種類を
一つ一つ、
空手の動きとして
確認していく。

すると、
ミヤギの掛け声に従って
その動作を繰り出せば、

ミヤギの渾身の
突きや蹴りを捌けている
自分に、ダニエルは驚く・・・。

その後は、
空手の大会でいじめっ子に
一矢報いるために
ミヤギとのハードな練習に
ダニエルは没頭していく・・・。

・・・

どの辺りが他人軸で
どの辺りが自分軸か、
もう、
おわかりかと思います。

空手の教科書的な型や
大会での好成績などは、
他人軸、ですね。

その一方、
雑用での反復動作は、
かなりな自分軸、です。

もう、ミヤギの独自な
世界ですよね。

だから、他人軸とのつながりが
見えなくなって、
ダニエルは、キレた。

でも、
その反復動作で、
ミヤギの拳を捌けた時、

ダニエルは
自分の現実を
自分で変化させている手応えを
持てた。

自己効力感
全身を貫く瞬間です。

そして、その瞬間は、
大会での好成績には
まだまだ届かないものの、

自分の自分軸が、
目指している他人軸と
接点を持って交差した瞬間、
でもあるのです。

なぜ、このシーンが
人気があるのか、
それは、

その瞬間を
わかりやすく
生け捕りにしているから
でしょう。

・・・

Aさんの話に
戻りましょう。

Aさんにも、
その瞬間が
ありましたよね。

リズムを維持する努力が
朝の不調をやわらげる、
それが自覚できた日。

その日までは、
Aさんのリズムを維持する努力は
いわば、
ダニエルの雑用の反復運動みたいに
なっていた、
とういわけです。

・・・

さて、今回は
ここまでです。

スキルを修得する際の
他人軸と自分軸、
というテーマは、
ものすごく、普遍的です。

だから、きっと、
どんなにささやかでも、
誰しも、
ダニエル的な瞬間が、
記憶にあるはずです。

次回は、
ダニエル的な瞬間が
成立するための条件を
考えてみましょう。

・・・

自己肯定感の低さに
悩んでいる時、

Do:
今までの人生の中で、
どんなささいな出来事でもよいので
自分にとっての
ダニエル的な瞬間を
想起してみる。
そして、
他人軸、自分軸という
見方に一層、親しむ。

Don’t:
自分には
どんなにささいなことであっても
そんな瞬間はないと
落ち込む。

落ち込んでしまいそうな方は
是非、次回以降の内容を
参考にしてみて下さい。
次回の内容は、
ダニエル的な瞬間を
感じられない、その原因について
探っていく回、
とも言えるからです。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、 
ぜひ一度、お問い合わせください。