森田療法入門④:絶対臥褥(ぜったいがじょく)とは?
さて、今回も、
森田療法のテーマが続きます。
前回は、こちら↓
森田療法入門③:感情を体得するとは?
森田先生の、
パニック障害の患者さんの治療例を
2回に渡って、紹介してきましたね。
森田先生の指示を、
以下に、再掲します。
・・・
発作が一番起きやすい
横向きなって、寝て下さい。
自分からすすんで
発作を起こすのです。
そして、
その横向きの姿勢のまま
発作の苦痛に耐え、
加えて、
発作の起こり方から、
発作の経過、全体を
詳細に観察して下さい。
・・・
この指示は、実は、
「絶対臥褥(ぜったいがじょく)」
と言って、
森田療法による入院治療の、
最初のステップ、
そのまま、なのです。
絶対臥褥とは、
何が何でも、
布団に横になっている、
という意味です。
※褥(しとね):敷き布団
今回は、
その意義について
確認しましょう。
そして、
「プチ絶対臥褥」
などが、
療養生活に組み込めると、
いいですね。
・・・
さて、その
絶対臥褥ですが、
森田先生は、
次のように説明しています。
※通常は4〜7日間。
・・・
これ、
すごいですよね。
パニック障害の方なら、
発作がおきたらどうしよう…
とても一人では耐えられない…
強迫性障害の方なら、
手が汚れたままだ…
手を洗いたいのに、
それができない…
こんな苦痛は死んだ方が
ましだ…
などなど、
それぞれの悶絶を抱えつつ、
何もしないで、
横になっていろ…、
ということなのですから。
する方も、させる方も、
気合い、必要ですね。
この手法では、
一体、
何が起きているのでしょうか?
・・・
それを理解するためには、
このメルマガで何度も紹介している、
チャンネル、という考え方が、
役に立ちます。
ヒトが何かを体験する時、
その情報を得る「チャンネル」が
6つある、ということでしたね。
6つとは、
・視覚
・聴覚
・身体感覚(感情も含む)
・身体運動
・他者との関係
・世界との関係、
でした。
絶対臥褥という環境では、
隔離されて、
横になっているだけなので、
身体運動や、
他者や世界との関係のチャンネルは、
かなり制限されます。
殺風景な部屋で、
気を紛らわすものもないので、
視覚、聴覚のチャンネルも、
実質的に、
シャットアウトです。
つまり、
身体感覚のチャンネルだけが、
開放されている。
これ、
どういう状況でしょうか?
自分の皮膚の感覚や
内臓の感覚、
そして、
自分の感情のエネルギー…
それらに、
他のチャンネルの情報を混ぜないで、
直接、向き合う、
という状況です。
平たく言うと、
ジタバタせず
感情を丸ごと味わう、
ということ。
だから、絶対臥褥は、
最も簡単に、
感情を「体得」できる
方法になるのです。
※チャンネルの基本的な考え方については、
こちら↓
うつ病の治し方:苦手なあなたのための瞑想入門
※チャンネルのコントロールについての
小椋の具体例については、こちら↓
うつ病の治し方:症状への対処法としての瞑想
・・・
森田療法では、
パニック障害や、
強迫性障害など、
神経症と呼ばれる精神疾患の、
いろいろな症状は、
つきつめると、
何ものかに対する恐怖を
カムフラージュするために
生じている、
と考えます。
だから、
その恐怖を「体得」し、
カムフラージュする必要が
なくなれば、
症状は消える…、
そう、考えています。
小椋も、そう思います。
・・・
ただし、森田先生は、
この絶対臥褥を
患者さんに指示する場合、
すごくちゃんと、
病状を診立てておく必要がある、
と指摘されています。
当然、
急性虫垂炎や心筋梗塞で
脂汗を流している時、
救急車を呼ぶべきですし、
精神疾患であっても、
統合失調症などの場合は、
延々と緊張した状態が
続いてしまう危険があります。
つまり、
感情リテラシーを高める、
特に、
不快な感情に対するキャパを上げる、
そのリハビリが、
病状の改善に直結す場合、
絶対臥褥は、
有効なアプローチになるわけです。
・・・
では、この学びを
療養生活に、
どう、活かしたらいいのでしょうか?
プチ絶対臥褥とは、
具体的に、どんな感じになるのか?
パニック障害の方なら…
予期不安が強くなって、
いつもなら、頓服を飲む時に、
1分、
そのまま、
何もしないで、止まったまま、
待ってみる。
そこで、
不安や恐怖を
味わう…
自分の感情のキャパを
上げるリハビリと念じて…。
強迫性障害の方なら…
不潔恐怖が強くなって、
いつもなら、手を洗う時に、
1分、
そのまま、
何もしないで、止まったまま、
待ってみる。
・・・
森田療法に興味があるが、
親しみにくいと思った時、
Do:
絶対臥褥は、
感情リテラシー上達の
リハビリとしての意義があり、
その、ごく簡易な取り組みを
療養生活に活かしてみる。
Don’t:
なんだか難しそう…
と食わず嫌いに終わる。
(前回と同じ)
いかがでしたでしょうか?
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