睡眠リズムを概日リズムから整えよう⑦:食事のタイミングを気にしてますか?
さて、今回も、
睡眠リズムを整えるテーマが続きます。
前回は、こちら↓
睡眠リズムを概日リズムから整えよう⑥:インターバル速歩のすすめ
概日リズムを整える
同調因子としての、
運動についての話題でした。
今回は、
食事について整理しましょう。
・・・
概日リズムと食事との関係は、
近年、「時間栄養学」という学問として
研究がすごーく盛り上がっています。
「何を」食べるか、だけでなく
一日の中で「いつ」食べるかが、
大きな影響を持つのです。
例えば、
同じカロリーのの食事でも、
夜に摂った方が、
日中に摂るよりも、
体重増加につながりやすい、
という結果を示す研究があります。
これら、
時間栄養学の知見を踏まえ、
2017年、アメリカ心臓協会(AHA)は、
次のような提案をしています。
一日のカロリー摂取量の
多くの部分を、
日中、早めに摂取した方がよい。
その方が、
心疾患や糖尿病に、
よい影響を与える。
また、
夜間、食事をとらない時間を
確保すべきだ、とも。
・・・
さて、成人病の予防に
新たな視点を提供している
「時間栄養学」ですが、
その成果を、
私たちPSMは、
どのように精神疾患の療養生活に
取り入れたらよいでしょうか?
結論を先にお伝えすると、
実は、
先ほどのAHAの提案と、
同じになります。
ただし、残念ながら、
時間栄養学にもとづいた
食事の摂り方が、
精神疾患によい影響を与えた、
ということを
直接示した研究論文は、
いまだ、ありません。
でも、しょうがないですね、
だって、やっと内科領域で
認められ始めたわけですから。
今後の研究に
期待しましょう。
と同時に、AHAの提案が、
概日リズムを整えることに
貢献することは、
間違いありません。
それを根拠に、
私たちも、時間栄養学を
療養生活に取り入れてみましょう。
・・・
AHAの提案、
つまり
・日中にしっかり食べる
・夜中は食べない、
このことが、なぜ、
概日リズムを整えることに
なるのでしょうか?
逆に言うと、
・夜中にいっぱい食べる、または、
・一日中、ダラダラ食べる、
このことが、なぜ、
概日リズムを
乱すのでしょうか?
・・・
この説明には、
このシリーズの1回目、
「中枢の体内時計」と
「末梢の体内時計」のお話を
思い出していただく必要があります。
こちら↓
睡眠リズムを概日リズムから整えよう①:概日リズムとは
「中枢の体内時計」とは、
脳の視床下部の視交叉上核の
神経細胞群でしたね。
一方、
「末梢の体内時計」とは、
からだのいろんな組織や臓器、
それぞれが持っている、
いわば自前の、体内時計でした。
そして
(1回目の記事をそのまま引用すると)
中枢の体内時計の発するリズムに、
末梢の体内時計がしっかり応じて、
最大限のメリハリでもって、
概日リズムが刻まれている、
とのとき、
ぶらんこは、元気一杯、
青空をめざしてスイングしている、
ということでしたね。
・・・
では、
食事がテーマの今回、
この「末梢の体内時計」とは、
具体的に、何のことでしょうか?
それは、
食事を消化する、
胃や、
小腸・大腸などの消化管。
そして、消化した結果の
エネルギー源としてのブドウ糖を、
貯蔵したり、
必要時に再び放出する、
肝臓や、
脂肪組織に含まれる脂肪細胞。
この記事では、
これらの臓器や組織を、
「消化系システム」と
仮に呼びましょう。
つまり、ここで話題にする
「末梢の体内時計」とは、
この「消化系システム」の持つ
体内時計、ということですね。
そして、
この消化系システムの
強力な同調因子が、
食事、なのです。
ある意味、当然です。
食べ物が消化管に入ると、
この消化系システムが、
全力で働き始める必要が
あるからです。
・・・
さて、
前置きはここまでです(苦笑)。
AHAの提案にもどりましょう。
なぜ、
日中にしっかり食べ、
夜中に食べないと、
概日リズムが整うのか。
また、なぜ、
夜中にいっぱい食べる、または、
一日中、ダラダラ食べると、
概日リズムが乱れるのか。
答えは、
前者では、
中枢の体内時計と
消化系システムの体内時計が
調和しているが、
後者では、
大きくズレているから。
消化系システムが持つ特徴を、
三つに整理しつつ、
解説してみますね。
・・・
一つ目。
消化系システムは、
「中枢の体内時計」と
ガッチリ連動した時、
効果的に機能します。
中枢の体内時計が、
「昼だよ」と
信号を出している間の方が、
日中の活動量の増大に対応すべく、
十分な量のブドウ糖を
血中に放出することができます。
逆に「夜間」は、
血中のブドウ糖を
脂肪細胞などに「貯蔵」するモードに
切り替わります。
この夜間に、
大量の食事が摂取されると、
どうなる?
ブドウ糖は活動に使われることなく、
ひたすら、貯蔵されるのです。
ここが、
成人病に悪影響を与えるポイントです。
また、
朝食や昼食を抜くと、
日中、低血糖となり、
パフォーマンスは、落ちます。
加えて、結局、夜、
反動で過食することにもなります。
つまり、
日中に活動し、
そのエネルギーは日中でまかなう、
そのように、
中枢の体内時計と、
消化系システムの体内時計は、
デザインされているのです。
・・・
二つ目。
消化系システムは、
同調因子である
食事の影響を大きく受けて、
体内時計を
調整することができます。
食事を摂る時間が習慣化して、
一日の決まった時間に
食事の刺激が入るようになると、
その時間に合わせて、
強烈に食欲を増進させることが、
できるのです(すごい…)。
その体内時計の実体は、
日中に血中濃度が上昇し、
食欲を増進させるが、
食事が入ると血中濃度が低下する、
グレリンというホルモンや、
その真逆の作用の
レプチンというホルモンです。
その両者の繊細なバランスで
一日の食欲が
コントロールされています。
だから、
朝食や昼食を
しっかりとる習慣を続けると、
その時間帯に
強い食欲が生じるようになり、
逆に、夜間は、
食べなくても平気になります。
でも、
夕食でほとんどのカロリーを
まかなうような習慣になると…。
そこで、最強の食欲が
生じるように、
体内時計が「プログラム」
されてしまいます、
こわい…。
また、
なんとなくダラダラ、
間食などもついつい手にとりながらの
食生活になると、
消化系システムが、
レプチンに反応しなくなっていきます。
レプチンは
もう満腹だよ、というサインなのですが、
その歯止めがきかず、
食欲がダラダラ続くのです。
要は、
日中に食欲のピークが来るように、
食生活を整え、
中枢の体内時計が示す概日リズムと、
消化系システムのリズムが
メリハリをもってシンクロする、
ということが理想ですね。
・・・
三つ目。
消化系システムは、
食事の刺激を受けて、
核温と、
心拍数を
上昇させる作用があります。
まるで、運動の機能に近いですね。
ある意味、
「消化管の運動」と解釈しても
よいでしょう。
だから、日中に、
消化系システムがしっかり活動する、
つまり、食事をしっかりとると、
概日リズムを増強させることが、
できるわけす。
でも、逆に、
食事の刺激が
夜間に入ると、どうなるでしょう?
このシリーズに
お付き合いいただいた読者の方なら、
おわかりと思います。
入眠を妨げますね。
ただし、
副交感神経が優位になり、
リラックスするという勢いが
上回るなら、
入眠を促す場合も、
あるでしょう。
でも、夕食や夜食は、
消化系システムを
一晩中、活動させることになります。
消化系システムにも、
休息時間が、必要なのです。
だから、消化系システムの
最大の活動は
日中で終えておくことが望ましい、
ということになります。
・・・
さて、
睡眠リズムが整わない時、
Do:
日中にしっかり食べ、
夜中は食べない。
Don’t:
夜中にいっぱい食べる、
または、
一日中、ダラダラ食べる。
いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。