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2020/08/23

アプリ「みっぷ」に込められた願い⑧:精神医学が隠してしまうもの



さて、ジラールの話題も
フィニッシュが近づいてきました。

前回は、こちら↓

前回は、
メンタル領域を、
ジラールの理論で見通すと、
どんな風景が見えるかを、
お伝えしたわけです。

概要をお伝えします、
といいながら、
要点を全部、
お伝えしてしまいました。

要は、

誰もが内心、持っている、
気が狂ってしまうのではないか、
という恐怖が、社会に
階層喪失をもたらす。

それを回避するための
いけにえにされたのが、
精神疾患を持つ
精神障害者であり、

その供犠(くぎ)に関する
神話(表)が、

精神障害者は、
精神科の治療やリハビリを通じて
健常者に近づけるよう
努力しよう、という
精神医学が用意した
ストーリーだ、
ということでした。

でも、このような説明が
ものすごく不快だったり、
ピンとこなかったり、
ショックだったりする読者の方が、
きっと、おられると思います。

今回は、
その解消を目指して、
補足をしていきますね。

・・・

まず、前回の、
気が狂うという状況の説明に、
異食や躁状態を挙げましたが、

それは、かなりインパクトのある例で、
他の精神症状の場合も、
同じ理屈で、説明できるのか?

という疑問が、
出てきても、おかしくないです。

他の場合は、
どうなんでしょうか?

例えば、
抑うつ状態。

朝も昼も夜も、
ずっと寝たきりで、
働くどころか、
歯磨きもできない。

でも、この一見、
無害にみえる状態も、
実は、静かに、強烈に、
周囲の者の
社会通念を逆なでしています。

日中は、起きて
働くのが、当たり前だろ?!
なにを朝からずっと、
寝ているんだ?!

社会通念からは理解できない行動なので、
言葉には出さなくても、
周囲の者は、
ものすごくイライラします。

そして、
絶対、自分はそんな状態には
ならない・・・と、
こころに誓って、
その場を去る。

だが、それは、
誓っているだけで、
ほんとうにそうかは、
自分自身にも、わからない。

だから、よけい、
腹が立つ。

それは、
自分の社会通念が
ゆさぶられることによる恐怖を、
瞬時に打ち消すための
怒り、ですね。

怒りって、
ダメージを受けているから
わいてくるわけです。

これが、
抑うつ状態の実情の理解が
乏しい方の、
典型的な反応になります。

それって、結局、
異食や、躁状態に対する反応と、
基本的には、同じです。

・・・

また、
こんな疑問が
わいてくるかもしれません。

精神医学って、科学でしょ?
精神疾患も、
客観的な基準で
診断されているんでしょ?

だから、
異常と診断されたら、
それって、事実であって、
しょうがないんじゃないの?

それを神話と一緒にするのは
おかしいんじゃないか?

皆さん、
どう思われますか?

現場にいる小椋としては
精神医学は、とても、
科学では、ないです。

もちろん、科学的であろうと
努力はしていますが、
まだまだ、人間という現象は
そう、簡単には見通せません。

同じうつ病なのに、
抗うつ薬が効く方と、
効かない方がいることを、
現在の精神医学は、
まったく、説明できません。

そして、
正常と異常を判断するのも、
そう、簡単ではない。

人間は、例えば、

三角形を
正三角形か、そうでないかを、
判別するようには、
いきません。

現在の精神医学に対して、
社会が、過剰に、
期待をしているのです、

メンタル領域における
正常と異常を
しっかり判別できるだろう、と。

この過剰な期待が、
まさに、神話を、
作っているのです。

人は、
健常者と
精神障害者に、
きれいに分別できる、と。

そして、その機能が、
供犠(ぐき)を、
階層喪失の回避を、
約束するのです。

もちろん、精神医学は、
経験科学として、
役にたつ部分は、あります、
が、
そのことと、
それが神話になっている、
ということとは、
両立してしまうのです。

・・・

みっぷをきっかけに
ジラールの理論を学ぶ時、

Do: 
あらゆる精神症状は、
社会通念に揺さぶりをかけて
階層喪失を招くリスクを
常に持っていること。

だから、社会は
精神医学を用意し、
それを、異常な精神疾患として排除することで、
階層喪失を回避しようとしていること。

そうでありながらも、
精神医学を背景とした
精神科医療が、
精神症状の緩和に役に立つ場合があること。

以上を知ること。

Don’t: 
精神医学は科学であり、
正常と異常を明確に区別できると信じることで、
神話(表)としての精神医学と、
神話(裏)としての精神医学について、
無自覚でいること。

※神話(表):
=異常なものは正常に戻せばよい。
異常と正常はそんなに簡単に
区別できないのに。

※神話(裏):
=精神症状を異常として排除すること。
それによって階層喪失を回避しようとしている、
そのことをなかったことにしている。

次回は、いよいよ、
このシリーズの最初の疑問に
答えていきましょう。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、 
ぜひ一度、お問い合わせください。