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2021/04/12

HSPとは何か⑫:自分の劣位機能と付き合うコツ



さて、HSPのシリーズ、
さらに続いて、今回は
12回目になります。

前回は、こちら↓

カタ井さんの例を通じて、

どのように優位機能を活用すれば
劣位機能の改善に
つながるのかを見た上で、

自閉症スペクトラム障害の方が
感情リテラシーの上達に取り組む場合も
同じだよ、とお伝えしました。

今回は、(久しぶりに)
ヤワ井さんヤワ目さん
登場してもらいましょう。

カタ井さん、カタ目さんより
はるかに脚が上るお二人は、

バレエ教室でも圧倒的に
目立ちます。

が、それぞれ、
同じ課題を抱えているのです。

それは、何でしょうか?

・・・

まずは、ヤワ井さん
体験している世界を
覗いてみましょう。

「動く」はどうか。

股関節は、
かなり、やわらかい。

脚を挙げると、
つま先は、頭の上まで
バンバン、挙がる。

でも、発表会では
いつも、脇役ばかり・・・。
(なぜだろう・・・)

「感じる」はどうか。

いつも主役のウマ井さんと、
自分の踊りを比べてみると、
確かに、何かが、違う。
それは、感じられるが・・・。
(そこから先はわからない)

「考える」はどうか。

「表現力がもう少し欲しいですね」
とは、先生のコメントだが、
ヤワ井さん自身は、
何に取り組んだらよいか、
わかっていない。

「信じる」はどうか。

いつか主役が踊れる日が
来るのかどうか、最近はもう
考えないようにしている。

レッスンはいつも、
汗だくになるまで運動した、
その達成感はあるが、
それ以上でも以下でもない。

もやもやをかき消すように
ひたすら、誰よりも高く
脚を挙げ続けるだけ・・・。

・・・

その一方、
ヤワ目さんは、どうか。

まず、「動く」

股関節に関しては、
ヤワ井さんと同レベル。

でも、「感じる」「考える」
全く、違う。

ウマ井さんから
少しでもコツを盗もうと
チェックし続けていた、
2年前のある日、
ヤワ目さんは、気づきました。

バーレッスンの簡単な動きでも
すでに汗だくになっているウマ井さん。

私も、たいがいのテクニックは
こなせるが、
この、ウマ井さんに比べると、
簡単な動きでも、まだまだ、
腰が入っていなかったのだ、と。

開脚前屈の時、
確かに、自分は、ちょっと、
腰椎が、後ろに、引いている。

その結果、全ての動きが、
ドンピシャのバランスから、
少しだけ、後ろに、いつも
オフバランスになっている。

それが、克服された時、
テクニックの安定性だけでなく、
強く、豊かな表現力を手に入れることができる、
ウマ井さんのように・・・。

それを悟った日でした。

つまり、ヤワ目さんは、
股関節に関する「動く」は申し分ないが、
「腰椎の位置」に関する「動く」は、
まだまだ改善の余地がある、
ということです。

その日からというもの、
彼女の目つきが
変わりました。

いままで、そつなくこなしていた
あらゆる踊りの動きを、
一旦、
「かっこに入れる」ことにしました。

そしてまず、
腰椎の周囲の筋肉を徹底的に
「感じる」ことに集中。

そして、腰が入ったときの、
腰椎が引き延ばされる、
その独特の快感にも、集中。

その感覚が、途切れないように、
それを保てる範囲でのみ、
「動く」ようにする。

すると、以前のように
高く脚を挙げることが、できない。

以前のように挙げようとすると、
どうしても以前のオフバランスに
戻ってしまう。

腰が引いたまま、
挙げてしまう。
それは、いやだ。

だから、今は、挙がらなくでもいい。
いまは、しかたがない。

でも、いまの取り組みを続ければ
ウマ井さんに近づける・・・、

そう「信じて」
レッスンに励んでいます。

・・・

さて、この二人が、
レッスン前に
開脚前屈している時、
クシャミをした。

どんな体験になるか?

まずは、ヤワ井さん

彼女は実は、
ヤワ目さんと同じで、

「腰椎の位置」という
「動く」の課題を持っている。

開脚前屈しながら、
おでこから胸まで、
床にピターッとついているが、
腰椎が、後ろに引いている。
(前屈の姿勢では、浮いている)

でも、その自覚がない。

その状態で、
上半身がクシャミをすると、
その運動と衝撃は、

腰椎が浮いているため、
下半身には伝わらず、

結果的に、上半身と下半身とが、
別々の動きをしてしまう。

それって、ギックリ腰
瞬間です。

イタッ!

・・・

では、
ヤワ目さんは、どうか。

腰が入った状態を
維持できる範囲で、
開脚前屈をしている。

腰椎の周囲に感覚を集中して、
深い呼吸とともに、
ジリジリ、ストレッチを
続けている。

クシャミの瞬間、
上半身の運動と衝撃は、

腰椎を介して、
下半身に伝わっている。

普段は体験しない衝撃波が
からだ全体を貫いたため、
ウッ、を声を出しはしたが、
ギックリ腰には
なっていない。

・・・

さて、
いかがでしょうか・・・?

からだの話、
そろそろ飽きてきましたか?
(苦笑)

でも、ご安心ください、
からだの実況中継は、
今回までです。

この後は、ひたすら、
架空のバレエ教室の話から、

療養生活に活かせる教訓を、
引き出していきましょう。

・・・

まず、
同じように
脚がバンバン挙がる
ヤワ井さんとヤワ目さんが、

これほど、
かけ離れた世界に
住んでいるということについて、
どのように感じられましたか?

・・・

二人とも、
似ているんです、

股関節の「動く」は
優位機能だが、

腰椎の位置に関する「動く」は
劣位機能。

でも、
ヤワ井さんは、
自分の劣位機能に対する
自覚が乏しく、
もちろん、開発されていない。

つまり、「繊細さん」の
タイプとしては
拒否反応型

ヤワ目さんは、
自分の劣位機能に対して
ガッツリ向き合い、
開発され始めている。

つまり、「繊細さん」の
タイプとしては
オーバーフロー型に近づいている。

この整理の中からだけでも、
教訓、3つ、出てきます。

・・・


一つは、

優位機能、劣位機能という
整理の仕方を活かすには、
機能を具体的に特定する必要がある、
ということ。

ヤワ井さんは、
「動く」が優位機能だ、
と言ってしまうと、
マズい。

ザックリすぎる。

「股関節」は優位だが、
「腰椎の位置」は劣位だ、
とする必要がある。

これに関連して
補足すると、

HSPについて、
「感じる」が優位機能の方、
と言ってしまうことが、
いかにマズいか、
わかっていただけるかと思います。

〇を「感じる」ことは優位だが、
△を「感じる」ことは劣位だ、
という言い方が、必要になります。

※このポイントは、
このシリーズの3回目で、
原型HSPが、その繊細さを、
特定の感受性や文化に
無自覚に結びつけていると批判した点に
つながっています。

さらに補足すると、

ある社交的な芸能人が
自分はHSPだと言って
反感をかった話題がありましたが、

かりに社交的であっても、
その人の「動く」の中の、
他の何かの機能が劣位で、
それがオーバーフロー型になってしまうなら、
原型HSP未熟形に該当する可能性は
あるわけです。

・・・

二つ目の教訓は、

劣位機能に向き合うには、
適切なゴールの設定と
それが可能となる
人としての成長の上でのタイミングが必要だ
ということです。

ヤワ井さんもヤワ目さんも、
ともに、
バレエがうまくなりたいという
大枠のゴール設定と、
目の前にいつも
ウマ井さんがいるという環境は、
同じ。

でも、ヤワ井さんは、
ヤワ目さんのように、

ウマ井さんを目を皿のようにして
チェックすることで、
自分との違い、もっと言うと、
自分の劣位機能のありどころを、
あえて知ろう、
とまでは、思えなかった。

一方でヤワ目さんは、
その結果、腰椎の位置という
自分の劣位機能を見いだし、
その改善、という新しい
具体的なゴールを設定することが
でき、実際、
延々と、取り組むことができている。

仮に、この上達の秘密を、
ヤワ目さんが、
ヤワ井さんに、教えてあげたとして、

ヤワ井さんは、
ヤワ目さんのようには、
取り組めないでしょう。

ヤワ井さんが、
怠け者だからだ、ということではなく、
タイミングが来ていない、
というしかありません。

人が成長するとは、
そのように、なんとも
不可思議な要素が
からんでいるようです。

・・・

そして、三つ目の教訓は、

劣位機能を開発するには、
それを代償する優位機能を
一時的に制限する必要がある
ということです。

ちょっと、言い方が
カタイですね。

ヤワ目さんの場合、

腰が入った脚の挙げ方を
身に付けるなら、

今までのような、
股関節のやわらかさにだけ頼って
脚を挙げるということを、
一時的に控える必要があった、
ということです。

つまり、
ある状況の解決のために、
得意やなり方と
不得意なやり方とがあって、

後者を改善したいなら、
前者に頼ることを、一時的に
やめる必要がある、
ということです。

むむむ、
こんなこと、
療養生活に関係あるのか?

ここ、大ありです。
無限に、例があります。

パニック発作への対処に、
抗不安薬の頓服と、
マインドフルネス瞑想とが、あって、

後者の効果を改善したいなら、
前者に頼ることを、一時的に
控える必要が、
ありますよね?

・・・

さて、
今回も長文になったので
この辺りでおしまいです。

このシリーズは、
HSPをきっかけにしつつ、

自分の劣位機能と
どうつきあっていけばよいのか、
というテーマについて
深掘りしているシリーズ
ということになります。

次回は、
カタ井さん、カタ目さんにも
再登場して頂き、

お互いに抱く感情をヒントに、
さらに残りの教訓を
引き出していきましょう。

次々回で、
それらをさらに
療養生活と結びつけた例を
シェアして、

その次の回で、
総まとめとして、
終了する予定です。

・・・

HSPが気になる時、
HSPであろうがなかろうが、

Do: 
自分の劣位機能と付き合うには
コツがあると知る。

Don’t: 
自分の劣位機能と向き合う
タイミングが来ているのに
避け続ける、あるいは
タイミングが来ていないのに
向き合いつづけて
しんどくなる。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、 
ぜひ一度、お問い合わせください。