2021/05/03
HSPとは何か⑮:8つの教訓 その2
さて、HSPのシリーズ、
今回が最終回です。
前回は、こちら↓
そこでは、
このシリーズから引き出せる
療養上の教訓、8つのうち、
4つをお伝えしました。
今回は、残りの4つを、
まず、お伝えしますね。
・・・
5:劣位機能の開発には、
それを代償する優位機能を
一時的に制限する必要がある
具体的には、
次のようなパターンがあります。
不安に耐えることができる、
という「感じる」の機能が
劣位の場合、
境界性人格障害の方なら
リストカット、
摂食障害の方なら
過食嘔吐、
強迫性障害の方なら
家族を巻き込んだ確認行為、
心気症の方なら
過剰な病院への受診、
双極性感情障害の方なら
軽躁状態となって
徹夜で掃除をしまくる、
などの、
比較的得意な
「動く」機能を使って
対処してしまう。
その「動く」を
療養の指導上、制限する、
その必要が出てくる、
ということになるわけです。
・・・
6:嫌悪感を抱く相手から
自分の劣位機能のありどころを
教えられる場合がある
典型的な状況は、
父親、あるいは母親への
嫌悪感が強い場合でしょう。
その嫌悪感に中には、
自分は苦手なのに、
相手は苦もなくやっている、
そのことの、
なんとも言えないイライラ、が
含まれている場合があります。
そのイライラに
自分がうんざりしたなら、
自分なりに、
自分の劣位機能と付き合う方法を
探るタイミングに来ているのかも
知れませんね。
そして、もう一つ、
大切な例を挙げておきます。
嫌悪感を抱く相手が、
実は、自分、という場合です。
このような療養生活を
強いられることになった、
この自分自身が、
死ぬほど、嫌いだ・・・。
あらゆる病いは、
自分の劣位機能との付き合い方が、
うまくいっていない、
その事を伝えるための
サインとして症状を生み出している、と
小椋は考えています。
なので、
そんな劣位機能をもつ自分を
嫌い続けるだけでは、
病いが癒えては、
いかないのです。
・・・
7:劣位機能を改善させる努力が
自己効力感を向上させる
療養生活の中で、
これがうまくいくためには、
条件が、少なくとも
3つ、あります。
一つは、
改善したい、つらい症状が
自分のどのような劣位機能から
由来しているのか、それを
理解できていること。
もう一つは、
その劣位機能との付き合い方を
変える意思が、
ゼロではないこと。
そして、もう一つは、
その劣位機能との付き合い方を
変える努力の成果を測る、
自分なりの評価基準を
持っていること。
※劣位機能との付き合い方を
変えるという、
非常に個人的なこころの作業を
客観的に評価することは
難しいから。
これらの条件がそろっていれば、
どのような精神疾患であれ、
療養生活を、有意義な時間に
生まれ変わらせることは
可能ですね。
・・・
8:自分の劣位機能を自覚し
その改善に努力している人と
交流する
HSPの話題にもどるなら、
HSPという用語自体が、
その誕生の経緯からして、
コミュニティを目指していた、
と言えると思います。
※アーロン博士が、
自分と似た特性のある者を
大学の教室から選んで
インタビューすることから
研究が始まったわけですから。
しかし、現在、
自称HSPの方々のコミュニティは、
いろいろなタイプの方の
混成状態だろうと
推測されます。
もちろん、背景には、
HSPという用語のあいまいさと、
劣位機能を優位機能だと誤認できる
余地を残してしまう甘美さなどが、
あるでしょう。
でも、きっと、その中でも、
原型HSP(未熟型)の方々が、
あんたもそうなのね、
あんたも、地味にがんばってるね、
という空気をお互いただよわせて、
適度に交流している場は、
あるのでしょう。
※原型HSP(未熟型)について
復習したい方は、こちら↓
その一方で、
お互い、劣位機能を優位機能と
誤認し合うことを目的として
交流している場も、
きっと、あるのでしょう。
前者を、
劣位機能・向き合うタイプ、
後者を、
劣位機能・なかったことにするタイプ、
と、仮に呼びましょう。
これは、HSPに限らず、
そして医療に限らず、
あらゆる人間の
コミュニティにおいて見られる、
二つの極、でしょうね。
これは、どちらが、
いいか、悪いかと、
簡単に言えないテーマです。
なぜなら、
劣位機能に向き合うべきタイミングは、
誰にも、
簡単にわからないからです。
でも、
向き合うタイミングに来ているな、
あるいは、
現に、向き合い始めているな、
とわかってしまった方は、
劣位機能・なかったことにするタイプ、からは
距離を置いたほうが
よいでしょう。
・・・
さて、これで、
8つの教訓すべてに、
療養生活に関連する内容を
補足したことになります。
いかがでしょうか?
ちょっと、
劣位機能、劣位機能と
ことばが続くと、
気分が重くなるかもしれません。
が、
自分のキャパが対応できる範囲で
取り組むことができると、
そこで得られる手応えは、
圧倒的です。
ちょっと、すすんだだけで、
ものすごく、うれしくなります。
子供の頃、
できなかったことが、
できるようになったときの、
あの、貫くような、
喜びです。
人が成長するとは、
そういうことのようです。
・・・
さて、これで、
このシリーズもおしまいです。
HSPという用語が
社会に広まると同時に、
弊害も感じたため、
整理整頓を一つの目標として
シリーズが始まりました。
結局、
自分の優位機能、劣位機能を自覚し、
劣位機能との付き合い方を
工夫する努力をしたい、
そのために
HSPという用語が有用なら、
その使い方で、問題ない、
ということです。
そして、
HSPであろうが、なかろうが、
その努力は
やる価値があるよ、
というメッセージでした。
・・・
そして、もう一つ。
このシリーズの後半、
バレエ教室が舞台になりましたが、
読者の皆さんには、
あまりなじみが
なかったかと思います。
なじみがないと、
そこで体験する世界を
「感じる」ことには、
努力が必要ですよね?
実は、多数派の方たちが、
PSMの方たちの世界を
「感じる」ことが難しいのも、
全く、同じ事情です。
すごく、努力が
必要なのです。
つまり、
多数派の方たちにとって、
PSMの方たちの世界を
「感じる」ことは、
劣位機能なのです。
このように、
多数派の事情を
「感じる」ことができると、
多数派への憤りが、
ちょっとマシになると
よいのですが。
・・・
HSPが気になる時、
HSPであろうがなかろうが、
Do:
自分の優位機能、劣位機能を自覚し、
劣位機能との付き合い方を
工夫する。
Don’t:
自分の優位機能と劣位機能を誤認し、
劣位機能に向き合うことを
避け続ける、あるいは、
時期尚早に向き合って
健康を害する。
いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。