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2021/10/25

身体リテラシー入門③:膀胱感覚を習得する子供たち



さて、身体リテラシーのシリーズ、
今回は第3回目です。

前回はこちら↓

6つのチャンネルの中の
3:身体感覚のチャンネルについて、
内受容感覚、という観点から
整理しました。

その感覚が過敏であることと
いろいろな精神疾患が
関連していることも
わかってきました。

そして、
内受容感覚を
適切に調整できるようになって
身体リテラシーが向上すると、

自分のからだとの
コミュニケーションが深まって、
自分のからだが、
いかに、自分の味方であるか、
それが実感できるようになる。

それが、
根源的な不安と付き合っていく上で
心強い支えになる、
という流れでした。

・・・

でも、具体的に
どうするの?
と思いますよね。

苦手な身体感覚のチャンネルを
開発するとは、

内受容感覚を適切に
調整できるようになるとは、
どういうことなのか?

実は、それって、
私たちが子供の頃、
無自覚に、自然に
身につけてきていることなのです。

・・・

解剖学者の三木茂夫
著書に『内臓とこころ
(2013年、河出書房新社)があります。

その本の中では
「内臓感覚」が
重要なキーワードになっています。

それは、このシリーズの
「内受容感覚」と全く同じ
人間の機能を指し示しています。

冒頭の「膀胱感覚」という章の一部を
文体を整えて、抜粋してみます。

著者が自宅で、
オムツが取れたばかりの
我が子を観察する記述ですね。

・・・

子供が一人で
積木で遊んでいると、
一連の動作の中で、
ふっと、腰のあたりに
なんだか異質な動きが入る。
この動きはなんだろう・・・。

しばらくすると
母親の声が聞こえた、
「オシッコでしょ?」と。

これが「サイン」なのだと
私は初めて知った。

観察を続けると、
その異質な動きは
一定の間隔を置いてやってくる。
まるで陣痛のように
だんだん間隔が狭まってくる。

すると母親の声が大きくなって
「早くいってらっしゃい」と。
でも子供は見向きもしない。

腰の動きはますます激しくなって
私のところに飛んでくる。
「ほら、オシッコだよ」と言っても
「ううん」と否定する一方で、
おんぶしろとか、むずかり始める。
「早く行きなさい!」と
母親の声に切迫度が加わる。

でも、子供にしてみれば
「トイレという感覚」が
浮かばないのだから
母親の声にもおかまいなし。

「オシッコがでるよー」と言いつつ
私が膀胱の真上を
ギュッと押さえてやると、
かなり強く響いたようだが、
自分の内部から出た感覚だとは
思わないようで、
「いやだ」と手を払うだけで
トイレに行こうとはしない。

とうとう地団駄を踏んで
部屋中を走り回るようになる。
「はやくしなさいっ!」と
母親が真剣に迫っても
「いや、いかない!」と
子供も真剣勝負。
私は唖然として見ているだけだった。

最後のとどめは、
もうギリギリの瞬間、
天の啓示のように
「オシッコー!」と
子供は心の底から叫んで
一目散にトイレに駆けていった。

人間の内臓感覚とは
いかなるものか、
全部ここに尽くされていると思う。

(抜粋終わり)

・・・

皆さん、
いかがでしょうか?

誰もが「トイレ感覚」を
身につけるまでに、
似たような試行錯誤を
繰り返しているはずですが、

もう、そのプロセスの記憶は
失っています。

でも、その時、
間違いなく私たちは、

内受容感覚が突きつけてくる、
全く把握できない得たいの知れない
情報と格闘し、

それに適切に応答するための調整を
全身全霊でやっていますね。

つまり、抜粋した例は、

いまだ開発されていない
身体感覚のチャンネルが、
いかに開発されていくか、
そのプロセスの典型を
示しているわけです。

・・・

もちろん
成人の私たちは、

膀胱の内受容感覚から
送られてくる不快のサインを
今では、尿意だと理解し、
適切に対処できるようになっています。

でも、PSMの方で
療養生活を強いられている場合、
尿意以外にも、
身体感覚のチャンネルから、
日々、さまざまな不快なサインが
送られ続けているのでは
ないでしょうか?

頭痛・・・
めまい・・・
耳閉感・・・
のどの詰まり・・・
胸のざわつき・・・
心臓が飛び出しそうな動悸・・・
吸っても吸っても息が入ってこない・・・
肩首の異常なコリ・・・
手足のしびれや冷え・・・
みぞおちの不快感・・・
吐き気・・・
腹痛・・・
お腹の張り・・・
全身がむずむずする・・・
じっとしていられない・・・
全身が鉛のようだ・・・
微熱・・・
強烈な眠気・・・

このような身体症状の全ては、
身体感覚のチャンネルから
送られてくるもののうち、
未だ、そのメッセージを
把握できず、
適切な対処を見いだせていない、
そのような内受容感覚だ、
と言ってよいでしょう。

つまり、私たちは
尿意はクリアしたが、まだ
宿題がいっぱい残っている、
ということです。

だから、先ほどの抜粋した
膀胱感覚の例は、
その観点から深掘りすれば、

身体リテラシーを向上させる
ヒントがいっぱい詰まっている
ということです。

・・・

次回は、
三木先生の子供さんの立場になって、
身体感覚のチャンネルを開発する
その生々しいプロセスを
さらに濃く、
追体験してみましょう。

・・・

根源的な不安に
さいなまれている時、
身体感覚のチャンネルの開発が
ポイントだと知った後、

Do: 
身体感覚のチャンネルを
開発することは
既に経験済みで、
それを今後は自覚的に
行えばよいのだと知る。

Don’t: 
身体感覚のチャンネルからの
不快なサインに
正面から向き合うことに
恐怖する。
※その恐怖はよくわかります。
なので、恐怖が強い場合は
「チラ見」から始めれば
よいです。
その辺りのコツも
今後、お伝えする予定です。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、 
ぜひ一度、お問い合わせください。