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2022/06/13

「毒親」とは何か⑥:隷属化パーソナリティ(ESP)の具体例



さて、今回は
毒親のシリーズ、第6回目。

前回は、こちら↓

親が、その「考えの核心」を
カムフラージュするために繰り出す
彼らの「考え」のパターンを、

4つにまとめて
分析・整理しましたね。

今回は、
彼らの具体例として、
一つの架空のケースを紹介します。

いままで小椋が知り得た
あらゆる父親、母親の
隷属化」ぶりを、

一つのパターンに
抽出したものになっています。

描く視点は、
まるでその家族の全部を
お見通しのような
神さまの視点から、
という感じになります。

・・・

A代さん、39才、女性。
優秀な保険の営業職で
バリバリ稼いでいる。

27才のときにできちゃった婚で
長女(A子さん)を出産。

一つ下の次女を出産後、
まもなく離婚。

現在、シングルマザーとして
A子さん(12才、中1)と
次女(A子さんの妹)との三人暮らし。

A代さんは
「今の私の生活に何も困ったことはない」
と考えている。

仕事も順調。
職場の対人関係にも問題なし。
睡眠もグッスリとれている。

「働かざるもの食うべからず」が
モットーで、
A子が家事・育児の分担をすることは
当然と考えている。

A子が担当する掃除・洗濯が、
少しでも不十分だと、
「あんたそんなんじゃ
生きていけないわよ!」と叱責するのは、

今時、女性も
一人で生活していくための
仕事と家事の能力を
身につけるべきだ、との持論から。

休日は、気分が向くと
子供たちを遊園地に
連れて行くことはある。

A代さんにしてみれば、
「まあ、ボーナスみないなものかな」。

・・・

A子さんの一番古い記憶は
妹の世話がうまくできずに
A代さんにものすごく怒られた記憶。

小学校時代はずっと、
帰宅すると、まずは掃除。
夕食の下準備。
そして妹の世話。

ちょっとでも手抜きをすると
すぐ見つけられて、
夕食なし。

暴力を振るわれた記憶はないが、
とにかく、A代さんが怖かった。

時々、酔っ払った会社の人が
夜遅くに自宅に来たことがあったけど、
A代さんをものすごく褒めていて、
その印象が強く残っている。

お母さんって、すごいんだ・・・、
やっぱり言われた通りにした方が
いいんだ、と自分に言い聞かせた。

でも、一番怖かったのは、
知らない男性が泊まりに来た時。

隣の部屋でずっと変な声がしてて
一睡もできなかった。

それなのに、遊園地で
家族三人で過ごした時間は
まるで夢の世界のようだった。

A代さんもニコニコして
妹もおおはしゃぎで、
家事も育児も忘れることができた。

・・・

A代さんは、
日々のスケジュールが変わることを
とても嫌っていた。

だから、A子さんの学校で
修学旅行についての保護者への
説明があった時、
「A子は参加できません」と返事をした。

ほとんどの生徒が参加するため、
心配になった担任がA代さんと
面談することになった。

A代さんは、
ニコニコした愛想のよい笑顔で
A子がいつもお世話になっていますと
応じる一方、

A子の妹の喘息がひどくて、
このコロナ禍の中、A子が
罹患でもしようものなら
妹が心配だと、不参加の理由を
淡々と伝え、
担任も了承せざるを得なかった。

・・・

A子さんは翌日、担任から事情を聞き、
修学旅行に参加できないことを知り、
ショックで何も喉を通らなくなった。

妹は喘息なんかじゃぜんぜんない・・・、
なんでそんな嘘をつくのか・・・、
でも、A代さんへも、担任へも
反論するエネルギーなどなく、
そうですか・・・、とうなだれた。

・・・

さて、
いかがでしょうか?

A代さんの、無敵な感じと
A子さんの、隷属化の悲しさが
伝わるかと思います。

このシリーズを
ここまで読み込まれた
読者の皆さまには、

双方で何が起きているのか、
かなり「見切る」ことが
できるように
なっているかと思います。

また、この例では、
毒親を女性にしていますが、
男性に入れ替えても、
ほとんど成り立つかと思います。

つまり、
この隷属化の特性は、
性別を超えているわけです。

このケースの特徴を
もう少し、挙げてみましょう。

・・・

一つは
A代さんに
精神疾患に該当する要素が全くない、
という点です。

A子さんにどんなにダメージが
積み重なっていても、

A代さんの言動に、
精神疾患の影響を見出すことが
できません。

もう一つは
A代さんに、
心理カウンセリングが噛み合う要素が
これまた、全くない、
という点です。

A代さんは、自覚的には
何一つ、困っていません。

シングルマザーだが、
男性関係にも
困っていないようだし。

だから、
心理カウンセリングを提案しても
カウンセラーと相談するテーマが
設定できないのです。

いわば、A代さんに、
カウンセラーがつけいるスキが
全くない。

三つ目は
A代さんの社会適応が
ものすごく良好だ、
という点です。

非の打ち所がない・・・。

・・・

このシリーズでは、
「毒親」と呼ばれる親たちの特性を、
人の4つの機能に従って、
分析・整理してきました。

彼らの、信じる、考える、
感じる、動く、については
既にお伝えしていますね。

今回、
その分析・整理をさらに
進める上で、

A代さんタイプの
毒親たちを、

隷属化パーソナリティ
(enslaving personality:ESP)
と呼称したいと思います。

パーソナリティ「障害」では
ないです。

精神疾患には
該当しませんので。

弱者を隷属化する
認知・行動特性を持った
「人」という意味になります。

なので、その特性が
発揮されるのは、必ずしも、
親子関係だけに限りません。

ESPは、
弱者と強者の力関係が発生する
対人関係の中なら、

夫婦関係でも、
上司と部下の関係でも、
部活の先輩と後輩との間でも、
現れてきます。

つまり、
雑多に「毒親」と呼ばれている
人々の一群の中には、

親子関係の中で出現した
ESPが含まれる、と
整理できるわけです。

ちょっと、ややこしいかも
知れませんが、
続く回でも、説明しますので
ご安心を。

・・・

次回は、
A代さんと似ているが
かなり印象の異なる
B乃さんをご紹介します。

・・・

毒親対策について
取り組む時、

Do:  
A代さんは、
ESPが親子関係の中で表現された
典型だと知る。

Don’t:  
ESPという未知の用語に
おそれをなす。
※引き続く回で
それがとても
整理に有効な概念だと
お伝えできると思います。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、 
ぜひ一度、お問い合わせください。