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2022/06/20

「毒親」とは何か⑦:隷属化構造(ESO)の具体例



さて、
毒親のシリーズが続きます。
今回は、第7回目。

前回は、こちら↓

架空のA代さんの具体例を紹介して、
隷属化パーソナリティ(ESP)という用語を
導入しました。

今回は、同じく架空の
B乃さんをご紹介します。

A代さんと、どこが似ていて
どこが違うのでしょうか?

・・・

B乃さん、39才、女性。
とある有名女子大を卒業後、
新卒のOLとして
大手企業の総務に就職しました。

25才で同僚と結婚し
寿退社の後は、
現在まで専業主婦。

27才で長女(B子さん)を出産後、
翌年には次女を出産。
二人の子育てはそこそこ
大変でしたが、

ご主人が育休を取ってくれるなど
とても協力的で助かりました。

そのご主人が、なんと、
昨年より海外赴任へ。

コロナ禍もあって、
休暇が取れても
簡単には帰国できず、

現在、B子さん(12才、中1)と
次女(B子さんの妹)との三人暮らしが
もう、一年、続いています。

・・・

B子さんは、
三人暮らしになってから
ガラッと家の空気が変わったことを
よく覚えています。

もともとB乃さんのことを
何かと細かい人だなとは思っていたが、
それに一層、拍車がかかった感じ。

特に学校の勉強。
中学に上がってから
毎回、全教科の得点を報告することに。

夏休み明けのテストで
英語と数学がちょっと下がったから
もう、大変。

小学校から続けていた陸上を
中学でも続けようと、
毎日、放課後の練習に
参加していたのに、

あなたはもっと
(勉強が)できるはずよ!

将来、陸上選手に
なるわけじゃないでしょ!

○○塾にM子ちゃんも通って
成績があがってるわよ!

□□高校(地元の進学校)ぐらいには
入ってもらわないと!

などなど、
機関銃のように連射され、

○○塾に週4日通うこと、
部活はその合間にだけ参加すること、
成績が下がれば、
その部活への参加もなしだ、
と断言されてしまいました。

ふだんは大人しいB子さんも
これには納得できず
食い下がりましたが、

こんなにお母さんが
あなたのことを思って
段取りをつけているのに
それを台無しにするのね!
と、半狂乱で泣き始めて・・・

B子さんは、
何も言うことが
できなくなりました。

翌日、
部活の先生に事情を伝えて
相談しようとしたら、

なんと、
B乃さんから既に電話で連絡があり、
成績が下がったのは部活のせいだ、
○○塾に週4日通うことの
支障になるようなら、
学校に訴えると、
クレームの電話があった、とのこと。

部活の先生も
何も言い返せなかった、と。

・・・

その後も、
B乃さんの理不尽な言動が
いろいろ出てくるようになって、

もともと、
あっけらかんとしていたB子さんも
だんだん、笑顔が
なくなっていきました。

例えば・・・、

ゴミ出し当番は
B子さんと妹とが
交代でするというルール。

でも、妹が忘れた時は
何も妹への小言なく
B乃さんが自分でゴミ出しをするのに、

B子さんが忘れた時は、
必ず、ネチネチ小言があって
さも、あなたの代わりに私がやっている
というオーラを満開にして
B乃さんがゴミを出す・・・。

B子さんは、すごく
自分が悪いことをした、という
感覚に陥って、しんどくなる・・・。

・・・

あるいは例えば・・・、

お誕生日の日に
学校でもらったたくさんのチョコを
自分の部屋に置いていたのに、
翌日、なくなっていました。

B子さんは、B乃さん譲りで
顔立ちがスッと整っていて、
小さい頃から男の子に
人気がありました。

翌日、妹に念のため聞くと、
ママに言わないでねと釘を刺された上で、
ママが捨ててた、と。

B子さんは、ショックでした。

・・・

あるいは例えば・・・、

B乃さん、今日は
機嫌がよいのか、
夕食、何か食べたいものある?
とニコニコしながら
B子さんに聞いてきました。

いやな予感がしつつ、
B子さんは、ハンバーグかな、
と答えました。

夕食は、実際に
ハンバーグが出てきたのですが、

食事中、B乃さんが独り言のように、
ハンバーグでよかったのかな?
よかったのかな?と
繰り返しボソボソ言い続けます。

B子さんはもう、
どんな気持ちでどんな表情で
夕食を食べたらいいのか
わからなくなりました。

・・・

あるいは例えば・・・、

月一回、夜の8時ぐらいに
お父さんから国際電話が
かかってきて、
B子さんも妹も、
ちょっとだけ話すのですが、

その後は、
B乃さんが、延々と
話し続ける声が、
家に響くことになります。

B子さんは、
その内容をあまり聞かないように
しているのですが、
その声の調子からすると、
いつも、B乃さんがお父さんを
責め続けているようなのです。

もっとお父さんといろいろ
話したいのだけど、
こんな感じのB乃さんがいることろでは
ムリだよな・・・。

・・・

あるいは例えば・・・、

○○塾の空調が冷えすぎて
お腹をこわして帰宅したB子さん、

ひどい下痢と腹痛で
うずくまっていた時、

B乃さんは見て見ぬふりをして
妹の宿題を一緒に見ていました。

・・・

さて、皆さん、
いかがでしょうか?

B子さんはいま、
中学1年ですが、
これが3年間、続いた時の
B子さんのダメージを想像すると
悲しくなります。

でも、B乃さんって、
前回、ご紹介したA代さんと、
かなり雰囲気、
違っていますよね。

A代さんは、
バリバリの営業職で、
無敵な感じの
隷属化パーソナリティ(ESP)

では、B乃さんも、
ESP、なのでしょうか?

・・・

そのあたりを
整理してみましょう。

A代さんとB乃さんの
共通点は、両者ともに、

・社会的な適応に問題はない
・精神疾患に該当しない

という点です。

B乃さんも、
近所の自治会の役割や
ご主人の会社との連絡など
特に支障はありません。

寿退社の前のお仕事でも
そつなくこなしていました。

では、違いは
どこにあるのでしょうか?

・・・

一番の違いは、

A代さんは、
カウンセリングの余地が乏しいが、

B乃さんは、
うまく導入できれば
カウンセリングが有効である
可能性がある、
という点です。

では、この違いは
どこから来るのでしょうか?

・・・

A代さんが持つ
弱者を隷属化する特性は、

ある種、生粋の、つまり
生まれつきの、というレベルです。

つまり、A代さんは、
こころに悩みがあろうとなかろうと、
(そして、ないのですが)
弱者を隷属化してしまうのです。

その一方、B乃さんは、
そうでは、ありません。

三人暮らしになる前、
B乃さんに、
弱者を隷属化する特性は
さほど、目立ちません。

三人暮らしになって以降、
おそらくは、ご主人の不在による
もろもろの不安が渦巻いてきて、

その対処として、
弱者を隷属化する、という方法を
無自覚に、取るように
なってしまった。

その違い、ですね。

いわば、
A代さんの特性は先天的、
B乃さんのそれは、後天的だ、
イメージすると
わかりやすいでしょう。

だから、
B乃さんの抱える不安に
カウンセリングが役立つなら、

B乃さんの
弱者を隷属化する特性は、
陰をひそめる可能性が
あるわけです。

・・・

この、
B乃さんのタイプの隷属化を、
ESPと区別して、

隷属化構造
(enslaving organization:ESO)
呼ぶことを提案します。

「構造」というのは
こころの構え、
こころの中のシステム、
というイメージでよいかと思います。

パーソナリティ、までには
至っていない、ということですね。

もちろん、
目の前の一人の毒親について、
ESPかESPかと
判別することは、
そう、簡単ではありません。

ただ、その区別の視点を持つことで、
目の前の毒親を
よりよく、見切る、ということが
可能になります。

・・・

毒親対策について
取り組む時、

Do:  
A代さんタイプをESP、
B乃さんタイプをESO、と
区別することで、
よりよく見切れるようになる。

Don’t:  
その区別する観点を持たないまま
振り回され続けて
隷属化が悪化する。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、 
ぜひ一度、お問い合わせください。