睡眠とリラックスのための呼吸法:チャンネルへの選択的注意
さて、今回は、呼吸法の具体的なお話です。
不安、不眠などへの対処法として
患者さんに指導する時に
お渡しするプリントの内容は、
次のようなものです。
1 腹式呼吸
・仰向け、または座って。胸とお腹に手をあてて。
・だんだん胸よりお腹がふくらむように。
2 イメージ
・いちばん安心できる場所を思い描いて。
3 調息
・鼻から吸って、口から吐いて。
(慣れたら鼻から吐いて)
・3秒で吸う、2秒ためる、10秒で静かに吐く。
(慣れたら15秒で吐く)
・6セット繰り返す。
4 イメージ(の一例)
・吸う:いま、ここにいる自分が満ちてくる、嵐の中でも大丈夫。
・ためる:嵐もとまる。鼓動が聞こえる。
・吐く:嵐が遠のいていく。
5 日課
・起きて1回、午後に向けて1回、寝る前に1回。
・しんどいときの対処法として、使えるように練習する。
この段取りは、
・マインドフルネスの呼吸法
・齋藤孝さんの「呼吸入門」
・トラウマの治療法のエッセンス
などを組み合わせています。
が、このプリントを渡して、
一緒に一回、練習しただけでは、
たいがい、うまくいきません(苦笑)
それだけで、
身につくようなタイプのPSMの方は、
すでに、自分でみつけて、
やっているでしょう(苦笑)
短時間の診察で、
なかなか十分なフォローができない
現実があります。
そこで、このような
メルマガなどの媒体で、
補足できることは、
小椋としては、ありがたいですね。
おそらく、
1〜3の指示に従って、
実際に動いて、やってみることは、
誰でも簡単にできると思います。
でも、「効くか」となると、
別物ですね。
「少しでも効く実感」がないと、
5の日課にするのは、大変です。
なぜ、効かないのか?
それを理解するには、
「チャンネル」という考え方が、
また、役に立ちます。
詳しくは、こちら↓
うつ病の治し方:苦手なあなたのための瞑想入門
私たちは、何かを体験するとき、
その情報を得る「チャンネル」が
6つ、あります。
・視覚
・聴覚
・身体感覚
・身体運動
・他者との関係
・世界との関係、の6つ、
でしたね。
そして、誰しも、
得意なチャンネル、
不得意なチャンネルがあります。
特に、
不得意なチャンネルは、
鈍感、または、過敏になりがちです。
あなたが、
呼吸法で対処したいと思う症状は、
どのチャンネルから
襲ってきますか?
例えば、不安、なら、
それは、感情なので、
身体感覚のチャンネルです。
そして、不安が強いとき、
まるで、他のチャンネルなんて、
存在しないと感じられるほどに、
そのチャンネルからの、
感情の体験に圧倒されます。
ここがポイントでしたね。
このチャンネルのバランスを
修正できれば、
症状は、ましになります。
詳しくは、こちら↓
うつ病の治し方:症状への対処法としての瞑想
呼吸法で、それができれば、
呼吸法が効く、ということになります。
例えば、
1 腹式呼吸
・仰向け、または座って。胸とお腹に手をあてて。
・だんだん胸よりお腹がふくらむように。
この時、
体にあてた自分の手のひらは、
呼吸にそって、
胸や、お腹がわずかに動く、
その変化を、感じているはずです。
でも、多くのPSMの方は、
このような、繊細な動きの感受性が、
とても、鈍くなっている方、
多いです。
この体験は、
身体運動のチャンネルから来ます。
でも、
強い感情で、
身体感覚のチャンネルが
占有されているとき、
身体運動のチャンネルは、
とても、
体験しにくくなります。
逆に、その時、
身体運動のチャンネルに、
注意を集中することができると、
チャンネルのバランスを、
回復できる可能性が、
でてくるわけです。
その瞬間が、
呼吸法が効く瞬間、
その一つです。
今の説明は、
呼吸法の段取りの、
1、について、
特に、
身体感覚と、
身体運動のチャンネルを
扱いました。
このような、
「おいしい」瞬間が、
1から5まで、
それぞれに、
いろいろあります。
次回は、
残りの部分についても、
ていねいに
確認していきましょう。
要は、
「選択的注意」です。†
自分の注意の方向を、
向けたいものに向ける、
そのコツがわかると、
苦手なチャンネルでも、
開発されていきます。
†選択的注意
心理学用語。
多様な情報が渦巻く環境下で、
重要な情報のみを選択し、
それに注意を向ける認知機能のこと。
さて、
呼吸法に取り組むとき、
Do:
呼吸法の段取りの、
一つ一つで、
どのチャンネルの、
どんな情報に、
注意を向けたらよいか、
しっかり確認しつつ、
練習していく。
Don’t:
呼吸法の段取りを、
チャンネルへの選択的注意に
配慮することなく、
なんとなく、
全体を繰り返すだけで、
効果が乏しまま、
結局、やめてしまう。
いかがでしたでしょうか?
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