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2017/12/31

躁うつ病の療養生活①:「感情」と「気分」を区別せよ


さて、今回は、
躁うつ病についてのお話です。

さっそく、具体例(架空)です。

30代の主婦の方。
うつ病の診断がついていて、
通院されています。

最近、子供が反抗期で、
子育てしながらイライラが多い。
今までになかった、
手を出して怒ることも…。

心配になって、ネットを調べると、
躁状態では、怒りっぽくなる、と。

「私は、躁うつ病ですか?」…

・・・

この質問、すごく多いです。

この主婦の方は、
うつ病から、躁うつ病に、
移行しているのでしょうか?

皆さん、どう思われますか?

もちろん、
この情報だけでは、
なんとも、判断できません。

でも、追加情報があった場合、
どうでしょう。

A:
子育ての場面以外では、
ちょっと元気のない、
いつものお母さんのまま。

B:
子育て以外の場面では、
夜中も起きて掃除をしたり、
派手な柄の洋服をクレジットで
どんどん買ったり…
「私の能力はこんなものじゃない」と
通信教育の講座を取ったり…
それが
ここ一ヶ月、続いている…。

Aの場合は、
診断は変わらないでしょう。

Bの場合は、
躁うつ病への移行が疑われます。

単に、怒りっぽい、
というだけでは、
躁うつ病の診断には、
ならないのです。

・・・

…という、豆知識を
お伝えするためだけに、
ここまでお話したのでは、
もちろん、ありません。

ここからが、本題。

「怒り」と「躁状態」、
それを区別できるようになる、
それが、療養生活上、
とても、重要です。

これは、
「悲しさ」と「抑うつ状態」、
それを区別できるようになる、
それとも、同じです。

だから、躁うつ病の方に限らず、
うつ病の方にも、役に立つと思います。

・・・

これは、
「感情」と
「気分」とを、
区別できるようになる、と
言いかえることができます。

「感情」は、
刺激に対する反応の一種で、
基本、一過性です。
※英語では、エモーションemotion

また、
「ヒトの4つの機能」の中の、
一つです。
※詳しくは、こちら↓
習慣を変えるには:行動を変えるだけではダメな理由

でも、
「気分」は、
その「感情」を含みつつも、
他の機能、
「動く」
「考える」
「信じる」を巻き込みつつ、
変動する、大きなうねり、なのです。
※英語では、ムードmood

怒り、悲しみ、などは、
「感情」。

躁状態、抑うつ状態は、
「気分」なのです。

だから、

Aの場合は、
子育ての刺激を受けている時だけ、
「怒り」という感情が
頻発しているだけ。

でも、Bの場合は、
その「怒り」の感情も含みつつ、
過活動、浪費、自信過剰など、
「動く」
「考える」
「信じる」など、
他の機能も巻き込んでいる、
躁状態、なのです。

・・・

この違いは、
次のようなイメージで捉えると
わかりやすいでしょう。

港の岸壁に、
海水面の高さを測る目盛があります。

波が低いときは、ほぼ、
一定の高さを示しています。

でも、大きな船が入港すると、
大きく上下しますね。
でも、しばらくすると、
もとにもどる。

その一方で、
潮の満ち引き、という現象がある。

これは、船の入港や、
その日の波の高さに、おかまいなし。

満ち潮になると、
ぐんぐん、上がってきて、
引き潮になると、
どんどん、下がっていきます。

月の引力など、
より大きな力が作用している結果です。

海水面の高さを、

上にいくほど、
喜びや、怒りなどの、
いわば、テンションの高い感情、

下にいくほど、
悲しみやさみしさなどの、
いわば、テンションの低い感情、

と例えてみるなら、

船の入港(=生活上の刺激)
による海水面の変化は、
一過性の感情の変化。

潮の満ち引きによる
海水面の変化は、
気分の変動による、
感情の変化。

同じ、海水面の上下でも、
起きていることが、
違いますね。

これをしっかり区別しよう、
そういう提案なのです。

・・・

もちろん、
そう簡単に、
区別できない場合もあります。

同時に起きている場合も、
あります。

でも、
その区別をしようとする努力は、
診断の上でも、
療養の上でも、
とても、重要です。

診断の上では、
例えば、
発達障害の方の激怒や過集中が、
躁状態と誤診されるケース、
すごく多いです。

療養の上では、
例えば、
生活上の刺激をきっかけに、
躁状態になったり、
抑うつ状態になったりする、
再発のパターンが多いです。

このあたりは、
次回にお話しましょう。

・・・

さて、
自分の怒りっぽさが、
躁状態か?と心配になった時、

Do:
「感情」と「気分」を区別し、
「気分」の変化が起きているか、
チェックする。

Don’t:
「感情」と「気分」を区別せず、
躁状態だ、と過剰に心配する、
あるいは、
躁状態ではない、と速断し、
躁状態を悪化させる。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。