ブログ

ブログ

2018/05/20

精神疾患で働けない自分は怠け者か?③:「世間」から排除されることへの恐怖


さて、今回も、

働いていない自分は
怠け者だ、
というマイナス思考からの
脱出を目指す、
このシリーズの
3回目です。

前回は、こちら↓
精神疾患で働けない自分は怠け者か?②:近代の労働観

前回までの流れは、
次のようなものでした。

働いていない自分は
怠け者だ、
というマイナス思考には、

人は働き者であるべきだ、
という「べき思考」が背景にあり、

その信念は、実は、
近代の産業社会の成立にともない
民衆に浸透したもので、

決して、人類普遍の真実ではなく、
それに馴染めない人々がいるのは
当然だ。

でも、その馴染めない人々が、
自分にメリットのないその信念を
それでも、捨てないのは、

その信念を捨てることで、
少数派になることが、
こわい。
だから、捨てられない。

・・・

今回は、
その恐怖が、
何に対するものなのか、
それを探ってみましょう。

歴史学者、阿部謹也さんの
『「世間」とは何か』講談社現代新書1995年を
参照しました。

・・・

世間」という日本語は、
日常生活でよく用いられますね。

でも、この言葉、
他の言語に翻訳することが
とても難しい、
日本文化独特の意味あいが
しみこんでいるようです。

嫌疑をかけられた政治家が、
「自分は無実だが、
世間を騒がせたことについては
謝罪したい」と
会見で述べるシーンは、
その複雑な意味あいが見て取れる
典型でしょう。

西欧の政治家なら、
自分の無実を、
社会に納得してもらうための戦いが
始まるだけです。

西欧の「社会」とは、
確立した個人が、
明確なルールのもとに、
未知の遠方の人たちも含めて、
多数、集合している、
その全体、というイメージです。

だから、
無実の罪を着せられたなら、
ルールにのっとって、
社会に訴えたらよいだけで、
謝罪をする必要は、どこにもない。

この「社会」と、
日本の「世間」とは、
随分、かけ離れています。

・・・

ポイントは、二つ。

一つは、
「社会」と比べて、
その範囲がかなり狭いこと。

同じ地域であったり、
親類縁者であったり、
同業であったり、

顔が見える範囲で、
お互いの利害関係が
複雑にからみあっている、
そのネットワークですね。

そして、もう一つは、
あいまいな基準で、
少数派が、強力に排除される、
そんなシステムになっている。

・・・

先ほどの政治家も、
世間を騒がせた、
といういい方をしながら、
決して、日本国民全体を
思い描いて語っては
いません。

お世話になった先輩議員や、
地元の後援会の面々が、
脳裏をよぎっている。

そして、
有罪であろうが無実であろうが、
嫌疑をかけられた、という
それだけで、

その政治家の属する、
世間というネットワークの中では、
多数派が容認できない、
平穏を乱す(お騒がせする)
少数派になってしまった。

だから、
自分の落ち度だと認め、
みなさんの落ち度ではないと保証し、
みなさんが大切にしている、その世間に
今後は
傷がつかないように配慮するから、

引き続き、
世間の一員として、
世間の中に、居場所を確保させてほしい、
排除しないで欲しい…
そういう、謝罪なのです。

居場所が確保されなければ、
人脈が切れ、
仕事が入らなくなり、
食べていけなくなる…
(いわゆる、干される…)

・・・

こんな謝罪を要求する
世間というネットワークって、
何なんでしょうね。

でも、メリットがあるから、
今の日本で、
ふつうに、存続しています。

そのメリットって、
何でしょうか?

世間とは、
その平穏を乱さなければ、
その人の生存が保証される
そんなシステムであり、

そのようにして、
生存を確保しようと思う人には、
メリットがあるネットワークであり
システムなんです。

平穏を乱さない、
という意味は、

その世間がもっている、
信じる、考える、感じる、動く、
それぞれのレベルでの
多数派のセンスを、
逆なでしない、
という意味ですね。

だから、
暴力を振るう、などの
わかりやすいレベルだけでなく、

体型や、
感情の表現の仕方や、
ものの考え方や、
人生観や宗教観など、
明確な基準はないものの、
逆なでするものがあれば、
排除…、となってしまいます。

・・・

さて、本題にもどりましょう。

なぜ、
人は働き者であるべきだ、
という信念を捨てることが、
そんなに、こわいのか?

それは、
その信念を捨て、
働かないでいることで、
世間から排除されるから。

それが、とても、
こわいから。

だから、
働いていない人は
怠け者ですよね、と
もんもんと苦しむ方は、
実は、
病状ではなく、
マイナス思考という形で、
「世間」と、
戦っているのです。

・・・

この「世間」との戦い、
ほとんどのPSMの方に、
大なり小なり、あります。

この戦いを
どうやって生き延びたらいいか?

それ、次回、
考えてみましょう。

・・・

さて、
働いていない自分は
怠け者だ、
というマイナス思考で
苦しい時、

Do:
この苦しみの根っこには、
世間から排除されることへの
恐怖があることを
まず、自覚しよう。

Don’t:
マイナス思考が
延々と続く。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。