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2018/10/14

森田療法入門⑤:思想の矛盾とは?


さて、
森田療法のテーマが続きます。
※その7、が最終回の予定です。
前回は、こちら↓
森田療法入門④:絶対臥褥(ぜったいがじょく)とは?

今回は、
思想の矛盾」についてです。

森田療法の中では
よく出てくる用語ですが、
なかなか、とっつきにくいですね。

森田先生の意図をくんで、
平たく整理すると、

頭の中で考えていること(=思想)と、
実際の現実が、
食い違っている(=矛盾)こと。

その場合、
対応は、二つ。

:実際の現実に合わせて
考えていることを修正するか、

:自分が行動を起こして
実際の現実を修正するか。

それだけ…
のハズなのですが…。

そのどちらも出来ずに、
その「思想の矛盾」が
延々と続いている状況…、

それが、
いろいろな神経症に
共通する病状なんだ、と
森田先生は考えます。

※神経症:
パニック障害や強迫性障害、
対人恐怖や赤面恐怖などの各種恐怖症。

だから、
その「思想の矛盾」を
解消することが、
森田療法の
目標の一つになるわけです。

・・・

具体的なイメージがわくように、
森田先生が実際に使った例え話を
一部脚色して、ご紹介します。

格闘技が得意な女子大生Aさんが、
彼氏と散歩中、
どう猛な大型犬に吠えられた。

見ると、リードを持っているはずの
飼い主がどこにもいない。
こわい・・。

その状況での、
Aさんの対処の仕方を
3通り(X、Y、Z)
見てみましょう。

・・・

X:彼氏の背中に隠れる

反射的に、
彼の後ろに隠れて、
目をつぶってしまった。
背筋がゾクッとして、
これ、恐怖、という感情だよね、
と自覚した。

自分は格闘技をやっているから、
ふつうの女子よりは
こわがらない、と思っていたが…
そんな自分の信念は、
打ち砕かれた。

でも、そんなこと、
どうでもいい、マジでこわいから…。
大丈夫だよ、と小声で言う
彼を心底、信じ切って、
後ろについて、
目を閉じたまま歩いた。

その後、お茶をしながら、
あの犬、ヤバかったよね…
と談笑し合った。

・・・

この時、Aさんには、

自分はこわがりではない、
という自己認識と、

実際に恐怖している
現実の自分、

その間の「矛盾」がありました。

Aさんは、
その自己認識を
修正せざるを得ないことを受け入れ、
今の自分に実行できる
現実的な行動を取ったわけです。

これは、先ほどの
①、②で言うと、
①ですね。

そして、
恐怖、という感情を自覚して、
それに対する現実的な対処ができている、
その意味で、
感情リテラシーが実践できている
とも言えます。

※助けを求めるのは、
立派な対処法でしたね!

・・・

Y:にらみながら別の道を行く

彼の方が、
自分よりもビビっているのが
よくわかった。

ここはなんとか、
自分主導で、切り抜けるしかない。

グッと、犬をにらみつけ、
犬の鼓動がわかるぐらいに観察しつつ、
刺激を与えないように、
静かに歩いて、
すぐの曲がり角を横に入って、
犬から遠ざかった。

・・・

これは、先ほどの
①、②で言うと、
②ですね。

そして、
このシリーズでも紹介した
恐怖突入」の状況でも、
あるわけです。

・・・

では、
その①も②も出来ない場合、
どうなるか?

Z:恐怖の身体感覚だけが残る

背筋がゾッとしたが、
格闘技をやっている自分が
恐怖などという感情を
抱くわけにはいかない…。
彼の手前もあるし…。

でも、とても犬の方に
目をやることなどできない。
どこを見るでもなく、
視線を泳がせながら、
気丈なフリをして、
結局、どこをどう歩いて
その状況を脱出したのか、
記憶があいまい…。

ただ、強烈に覚えているのは、
心臓が飛び出しそうな…
息を止めて窒息しそうな…
そして、首筋の汗の感覚…。

・・・

さて、Zの場合、
「思想の矛盾」は
どこにあるでしょうか?

格闘技をする者は
恐怖を抱いてはいけない、
という信念のもと、

私は恐怖という感情を
抱くことはない、
という「思想」がある一方、

現実には、
激しく恐怖している。

そこに、
矛盾があるわけです。

その結果、
感情リテラシーにそって
XやYのように、
行動を起こすことができない。

わかりやすいのは、
視線のあり方です。

Xのように、
彼を信じ切って、
完全に閉じることもできない。

Yのように、
立ち向かう決意で、
完全に正視することもできない。

視線が宙を泳いでいる間、
意識は、
何に注目するかと言うと、

自分の身体感覚に
注目する他ない。

こうなった状態を、
森田先生は、
恐怖に恐怖する
と表現します。

犬、という
外界の対象に恐怖するのではなく、
恐怖という自分の中にある感情に、
恐怖する、
という意味です。

こうなると、
やっかいです。

ここを起点に、
夜が怖い…
他人が怖い…
など、

恐怖の対象を、
どんどん、勝手に、
外界につくってしまう。

恐怖という感情を
引き起こす可能性のある、
あらゆる対象が、
恐怖の対象に、
なってしまうのです。

これが、
いろいろな恐怖症の、
発生する原風景、です。

・・・

これが、
「思想の矛盾」が
神経症を生み出すメカニズムの、
概要、ですね。

感情リテラシーが
いかに重要か、
それも、見えてきます。

その実践を妨げるのは、
Zの場合では、

恐怖する自分、
その現実を見たくない、
という「思想」です。

その結果、
「考える」というヒトの機能が、
大きく、歪んでしまいます。

特に、「情報収集」が偏ります。
見たくない現実に関する
情報を、拒否するようになる。

これ、このメルマガで、
一緒に考えたこと、
ありますが、思い出せますか?

そう、
現実を見ようとしない、
マイナス思考、でした。こちら↓
マイナス思考への対処法⑥:見たくない現実を見よう

その意味では、
「思想の矛盾」とは、
マイナス思考の別名、
と言っても、よいでしょう。

だから、森田療法には、
このメルマガでお伝えしている、
認知リテラシーも、
ふんだんに、含まれていますね。

・・・

この「思想の矛盾」を
実際には、
どのように修正していくのか、
その辺りを、
次回、お伝えします。

・・・

森田療法に興味があるが、
親しみにくいと思った時、

Do:
「思想の矛盾」とは、
マイナス思考の別名であり、
その修正は、
認知リテラシーの実践だと
理解する。

Don’t:
なんだか難しそう…
と食わず嫌いに終わる。
(前回と同じ)

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。