睡眠リズムを概日リズムから整えよう④:光のコントロール
さて、今回も、
睡眠リズムを整えるテーマが続きます。
前回は、こちら↓
睡眠リズムを概日リズムから整えよう③:あなたのクロノタイプ(睡眠の型)は?
自分の睡眠の型(クロノタイプ)と、
それを崩してしまう、
社会的時差ボケ、
精神疾患による症状、そして
睡眠後退について、
その対策もふくめて
考えてみました。
今回は、いよいよ、
概日リズムを整えるための
具体的な方法、まずは、
「光」についてのお話です。
・・・
このシリーズの初回で、
「中枢の体内時計」について
お伝えしました。
覚えておられますか?
脳の視床下部の、
視交叉上核、という神経細胞群が
その実体でした。
そこが
概日リズムを「発信」し、
全身の細胞が「受信」する。
その、中枢の体内時計を
リセットするための、
最大の刺激が
「光」なのです。
もっと言うと、
ブルーライト、ですね。
目に見える光の中で、
波長が短いものです。
太陽光には、
いろいろな波長のものが、
おおよそまんべんなく
含まれています。
でも、パソコンやスマホなどの
液晶画面の光は、
ブルーライトです。
逆に、
電球(白熱灯)は、
波長が長め(暖色系)ですね、
そのブルーライトが
目の網膜に届くと、
それに刺激されて、
網膜に並んでいる、
ある、特殊な細胞が、活性化します。
視覚をつくる、
よく知られた視細胞とは別に、
近年、発見されて
研究が活発になっている、
光感受性網膜神経節細胞
photosensitive retinal ganglion cell
(pRGC)という細胞です。
※こんな名前、覚えなくていいです!
※第三の視細胞、とも言われています。
この細胞からの信号が、
視交叉上核に送られて、
中枢の体内時計が
リセットされるのです。
・・・
この細胞の信号には、
それだけではなく、
心拍数を上げたり、
深部体温(内臓の体温)を上げたり、
メラトニンというホルモンの
血中濃度を急激に下げる、などの
直接の作用もあるようです。
心拍数や深部体温を上げるとは、
まさに、
これから動くぞ!と
からだのエンジンを入れる感じですね。
メラトニンは、
脳の松果体(しょうかたい)という部位で
産生されるホルモンですが、
中枢の体内時計に従って、
夜中の2〜3時頃に、
一番、血中濃度が上昇し、
明け方に向かって減少します。
睡眠リズムに
とても大きな影響を持っています。
そのメラトニンが、
その細胞(pRGC)からの信号で、
ストンと減少します。
まるで、
夜が終わったぞ!
と号令がかかる感じです。
いかがでしょうか?
朝、網膜に光を入れて、
pRGCを刺激することが、
どれほど、
概日リズムというぶらんこを
しっかりスイングさせるために
重要か、おわかり頂けると思います。
・・・
でも、実際には、
どんな光を
どんな時間に、
どれくらい浴びればよいのか?
それ、知りたいですよね。
そこで、
一つの研究をご紹介しましょう。
8人の都市生活者を一週間、
夏のロッキー山脈でキャンプさせると、
睡眠リズムがすごく改善した、
という研究です。
キャンプの前は、みんな、
0:30頃にねて
8:00頃に目覚ましで起きて、
日中はビルの中で仕事をし
夜になっても蛍光灯をつけて
パソコンやTVに向かってる、
そんな生活でした。
それが、キャンプに入ると、
一変します。
朝日が登れば、
そのまま日中、ずっと日光を浴び、
日が沈むと、
ランタンと、たき火の明かりだけ
(携帯、パソコンなし!)
という生活です。
その結果、みんな
22:30頃に寝るようになり、
目覚ましがなくても、
日の出とともに
起きるようになりました。
そして、なんと、
メラトニンの血中濃度の
ピークを示す時間が、
2時間も早くなった。
脳とからだが
「夜」と認識している時間帯が
2時間、前倒しにできた、
という意味になりますね。
そして、都市で生活しているよりも、
日光を浴びる量が、
4倍になっていた。
実は、
日照時間が一番短い、
日差しも弱い、
冬に実験しても、
結果は同じだった。
・・・
もちろん、みなさんに
キャンプに行こう!
と呼びかけているのでは
ないです。
この研究からわかる、
概日リズムを整えるためのコツ、
特に、光に関するものを、
少しでも現状の生活に
取り入れよう、ということですね。
まずは、やはり、
朝、日光を、
網膜に入れよう、
ということになります。
日光には十分な
ブルーライトが含まれています。
ベランダなどの屋外に出る、
がベストでしょうが、
カーテンを開けるだけでも、
違います。
また、雨の日であっても、
意味はあります。
その時間帯ですが、
当然、早い時間帯ほど、
概日リズムを
前倒しに、しやすくはなります。
でも、
日中、日光を浴びる、
その総量も、
関係してきます。
だから、
がんばって7時に起きて、
カーテンを開けても、
すぐに二度寝をして、
12時に起きたとしたら、
その努力の結果は、
期待はずれになりそうです。
起きた後、そのまま
起き続けられる時間帯に、
まずは、起きよう、
というアドバイスになりますね。
そして、日中も、
なるべく、カーテンを開けて
窓の近くにいるようにしましょう。
窓のあるオフィスと
ないオフィスで、
浴びた日光の量に
差が出るという研究、
ありますから。
・・・
そして、夕方から
夜にかけてのコツです。
これも、どれだけ、
実験でのキャンプに近づけるか、
ということになります。
まず、部屋の照明は
暖色系にする。
そして、可能な限り、
パソコンやスマホ、
TVからのブルーライトを、
避ける。
これが、難しい!
(ですよね…)
でも、その刺激が入ると、
脳とからだは、
「ん?まだ昼か?」
と勘違いする、その事情は、
もう、お分かりですね。
これをやらないと、
どんなに日中、
しっかりぶらんこを
押しても、
引き方がまずくて、
しっかりスイングしなくなる。
(というイメージです)
・・・
さて、
睡眠リズムが整わない時、
Do:
日中に、
日光を浴びる総量を増やし、
夜に、
ブルーライトを浴びる総量を減らす。
その上で、
徐々に、朝、網膜に
日光を入れ始める時間帯を調整する。
Don’t:
その逆をする。
あるいは、
自分のクロノタイプや
自分の現状から
かけ離れたスケジュールを組んで、
一層、概日リズムが乱れる。
いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。