2019/04/29
相手に対する強い承認欲求の自己コントロール:対人関係療法をヒントに①
読者の方からの質問に
お答えします。
相手に自分のことを
わかって欲しい…
特に、異性の場合、
なおさら、そう思ってしまう。
それがとても苦しい、
それを和らげる方法はないか、
とういご質問です。
その方は、
自分の「承認欲求」が
強すぎる、と訴えておられます。
承認欲求とは、
学術用語ではありませんが、
心理学関連では、
よく用いられる、便利な用語です。
英語では、
approval seeking
とも言われ、
相手の承認を求める
飽くなき渇望、ぐらいの、
強い言い方になります。
皆さんは、
いかがですか?
相手にどれだけ伝えても
わかってくれない、
その不満がぜんぜん、消えない…。
なぜわかってくれないの!
その不満をぶつけると、
一層、相手とのコミュニケーションが
うまく行かない…、
悪循環…。
・・・
これを解決するたの方法には、
どのようなものが
あるでしょうか?
一つのヒントは、
対人関係療法の中にあります。
一言でまとめると、
相手への期待を
下げる。
むむむ…、
なんとも身もふたもない
感じですが…(苦笑)。
※対人関係療法とは、
認知行動療法と並んで、
精神療法の中で治療効果が
臨床試験で認められている、
数少ない技法の一つ。
・・・
相手に求めるレベルが
いま、100%の場合、
それを、80%でよしとする、
あるいは、60%…
あるいは、45%…、でよしとする、
ということです。
それが、できれば、
相手に対して、
自分のことを他の人よりは
少しは、わかってくれているわけだから、
まあ、いいか…、
という気分になれて、
100%を求めて
もがいていた時よりは、
苦しみは、少なくてすみます。
・・・
このヒントをお伝えしただけで、
あ、そうか…
と自分の認知がシフトして、
グッと楽に相手と接することができる、
そんな方も、おられます。
でも、
そんなことができたら
こんなに苦しまないよ!と、
あまり役に立たない方も、
おられますね。
なぜでしょうか?
それは、
誰かに承認を求める、
という欲求が、
ヒトにとって、とても
根源的なものだからです。
・・・
この辺りの事情は、
赤ちゃんの心理的発達を研究する
幼児心理学の知見から、
推し量ることができます。
幼児は、
自分が興味を持ったものを、
ほら、これ見て!
と言わんばかりに、
お母さんに見せようとします。
これ、
承認欲求の原風景、
ですね。
この頃の幼児は、
自分の承認欲求が、
100%満たされている、
という感覚を
味わっているようです。
この体験は、
定型的な心理発達のために
とても重要なステップになります。
そして、小学校に上がれば、
テストの答案用紙を持ってきて、
ほら、これだけがんばったよ!
と見せようとします。
でも、
「いま忙しいから、後にして…」
とお母さんはバタバタ家事を続ける…、
すると、
なーんだ、つまんない…と
ちょっと、シュンとなる、
でも、まあいいか…、
この前のテストは見てくれたから…と、
あまり気にせずにやりすごす。
この頃には、
自分の承認欲求が、
100%満たされている、
という感覚は、
なくなっています。
・・・
このように、成長の過程で、
自分の承認欲求が、
100%、満たされることはないが、
そこそこは、満たされる、
という体験を積み重ねて、
ヒトは大人になっていきます。
いわば、自然に、
100%をあきらめる、
つまり、期待を下げる、
ということを、
練習しているわけです。
この、
「そこそこ」満たされる、
というあんばいが、
すごーく、重要です。
承認欲求が満たされる、
という体験が不足していると、
大人になっても、
100%を求め続けてしまいます。
逆に、子供の頃に、
ひたすら、100%、
満たされ続けていたとしたら、
それはそれで、
また、100%を、
求め続けてしまいます。
いずれにせよ、
承認欲求が100%満たされる、
そんな対人関係は、
成人後では、現実的ではないので、
飽くなき承認欲求に
苦しむことになります。
・・・
だから、
成人になる過程で
自然に練習できる場合が多い、
この、「期待を下げる」
ということを、
大人になってから、
自覚して練習すること…、
それが、
対策になるわけです。
・・・
強い承認欲求で
苦しい時、
Do:
相手への期待を下げる、
という練習を
自覚して行う。
Don’t:
100%の承認欲求の満足を
求め続ける。
<補足>
承認欲求が100%満たされる、
という幼児期の体験が
乏しい方の場合、
セラピストが、
母の役割を一時的に担って、
その体験を提供する場合があります。
それでも、いつかは、
その「期待を下げる」練習を
始めるしかありません。
自分一人で取り組むのが
大変すぎる場合、
セラピストと一緒に
チャレンジすることを
おすすめします。
いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。