2021/02/28
HSPとは何か⑥:原型HSP(未熟形)は思慮深いか?
さて、HSPのシリーズ、
6回目になります。
前回は、こちら↓
アーロン博士の半生を共有し、
原型HSP(未熟形)の実情を
見てきました。
特に、
洋服売り場での
エピソードに注目し、
人の4つの機能の中の、
「考える」と「感じる」は、
多くの情報を
処理しようとするが、
それに対して
「動く」がついていけない、
そのアンバランスが
苦痛の本質だ、
と整理しました。
今回は、その実情を
さらに詳しく
探ってみましょう。
・・・
当時のアーロン博士の
体験を推測すると、
次のようなことが
起きていたと思われます。
※以下は、著作をもとに
小椋が想像したイメージです。
まず、
広い売り場に立った
その時点で既に、彼女は、
ズラッと並んだ
多数の洋服の、
形や色、
大きさや素材、
細かなデザイン、
全体から醸し出される
雰囲気や、
重さ、軽さの印象など・・・
膨大な情報量に
圧倒されて、
固まっていたハズです。
決して、
洋服やオシャレが
嫌いなわけではない。
だから、
意を決して、
目の前の一つの
洋服を手に取ってみる。
この、青、
ステキだよね、
なんだろう、そうだ、
フェルメールの青に
似ている・・・
でも、私、たまには
明るめの洋服も
着たほうがいいよね、
こっちの黄色、
なんだか、ひまわりみたいで
これもステキ・・・
このフリルもきっと、
安くはない素材で
作ってあるよな、
それ、私、わかる・・・
こんな調子で、どの服も、
それぞれ、いちいち、
「感じる」と「考える」
が、フル回転します。
でも、彼女は、
その中から一つを、
選べない。
なぜか?
・・・
「考える」が、
不十分にしか
機能していないから。
このメルマガでおなじみの
認知リテラシーでは、
「考える」という機能は、
ゴールの設定
↓
情報収集
↓
判断
↓
結論
という
基本セットの流れに沿えば
ヘルシーだ、
とお伝えしてきました。こちら↓
彼女の場合、
ゴールの設定と
結論が、弱い、
と言えます。
例えば、
20分以内に、
この夏に着る
6000円以下の
一着のワンピースを
自分で決めて購入する、
などをゴールとして設定し、
このゴールを常に意識しながら、
実際に、
この一着だ、
という結論を出す。
この練習が、
10代の頃から
不足していた、
と推測されます。
もちろん、
最初から、
うまくはいかないでしょう。
20分という制限の中、
うー、これにしとけ!
と選んだものが、
あとで後悔するものだった、
ということは、あるでしょう。
でも、その失敗から、
つまり、
実際に購入する、という
「動く」の機能を使ってみる、
その体験によって、
「考える」機能が
向上するのです。
・・・
なぜ、
その練習が不足したのか?
ちょっと、脱線しますが、
簡単にコメントすると、
あなたは内気だよね、
と言われ続けた結果の、
「自分は内気だから
自分で決定できない」
というネガティブな
自己認識を持っていた、
加えて、
自分が決定しなくても
誰かが決定してくれる、
そのような環境に身を起き続けて
しまった結果、
「誰かが決定してくれるだろう」
と(無自覚に)信じていた、
そのような
「信じる」があったから、
と推測できます。
・・・
まるで、
一面識もないアーロン博士を
ディスっているような
記事になってきましたが、
それが本意では、
もちろん、ありません。
原型HSP(未熟形)の実情を
クリアにするために、
その特性の
プラスの面だけでなく、
マイナスの面もしっかり
把握しよう、
ということです。
まとめると、
次のようになります。
原型HSP(未熟形)は、
「感じる」は得意で、
豊かな情報量を
得ることはできる。
また、
「考える」も、
「情報収集」と「判断」に関しては得意で、
「感じる」が得た情報に
適切な判断を加えることは、
できる。
しかし、
「考える」の
「ゴールの設定」と「結論」が不得意で、
その結果、
「動く」が、
かなり不得意になる。
これが、
原型HSP(未熟形)の
実情なのです。
・・・
アーロン博士が
最初の論文を出版して以降、
多くの研究が
HSPに関して蓄積しています。
その結果、現在では、
HSPの特性として、
・情報処理の深さ(思慮深さ)
・感覚情報による興奮しやすさ
・自他の感情への配慮がある(共感性がある)
・周囲の環境を繊細に感受する
が挙げられています。
でも、この把握の仕方には、
研究の方向性を
混乱させる要素があると
小椋は考えています。
・・・
一つは、
「情報処理の深さ」について。
それをどう客観的に評価するのか、
実際、議論の的になっています。
皆さん、
洋服売り場のアーロン博士は、
「思慮深い」と言えると、
思いますか?
確かに、
洋服について、
他の人なら気がつかない点に
気がついて、
他の人ならいちいち考えないことも
考えている、
その膨大なエネルギー消費は、
確かに、
「思慮深い」かもしれません。
でも、
先ほど、確認したように、
それは決して、ヘルシーな思考では、
ありません。
結論が出せず、
「動く」という機能を
育てることが、
できていないからです。
このような、
決してヘルシーではない思考は、
実は、
精神科領域で、
無数に見かけます。
強迫性障害の方の強迫観念、
対人恐怖の方の対人過敏、
うつ病の方の全か無かの思考、
などなど・・・
そのどれも、
膨大なエネルギーを
消費しています。
でも、だから、
「思慮深い」と言えるのか。
HSPの19項目のチェックリストでは、
これに対応する質問は、
豊かな内面生活を送っていますか?
これ、一つしか、ありません。
ヘルシーではない思考であっても、
膨大なエネルギーを消費していれば、
そして、その状況を
「豊かだ」と自認していれば、
その質問は、はい、
になります。
ここが、
チェックリストHSPには、
原型HSP(未熟形)以外の方が、
膨大に含まれてしまう理由の
一つになります。
・・・
もう一つ。
「感覚情報による興奮しやすさ」について。
原型HSP(未熟形)が、
なぜ、そうなるのか。
そのメカニズムは、
このシリーズでは、
「感じる」が得意な割に、
「考える」の一部と
「動く」が、不得意だから、
と説明してきました。
つまり、
HSPを研究するにあたって、
得意なところ(「感じる」)だけを
研究しても、
全体が見えてこないだろう、
ということです。
「感じる」と
「考える」「動く」との
アンバランスが、
原型HSP(未熟形)の
本質なのだから。
・・・
そんなこと、
私に言われても・・・、
と思われるかもしれません(苦笑)
でも、
混乱せずに、
HSPという言葉と付き合うなら、
この程度の整理は、
必要かと思います。
・・・
さて、
今回は、この辺りで
おしまいです。
次回は、
性同一性障害の特性をもった女性の方が、
アーロン博士と同様に、
洋服売り場に立った時、
どんな状況になるか、という
架空の例を
ご紹介します。
それを通じて、
HSPに関しての、
大きな問題点の一つ、
「何に関する」
感受性の繊細さなのか、
というテーマについて
整理していきます。
・・・
HSPが気になる時、
Do:
原型HSP(未熟形)の
「思慮深さ」は、
決してヘルシー思考ではない
と知る。
Don’t:
思考にエネルギーを消費していれば
「思慮深い」と速断する。
いかがでしたでしょうか?
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