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2022/01/03

身体リテラシー入門⑬:チャンネル・スイッチの実際



さて、身体リテラシーのシリーズ、
今回は第13回目です。

前回はこちら↓

そこでお伝えしたのは、

身体感覚のチャンネルから
押し寄せてくる根源的な不安
別のチャンネルで表現することは、

自我のゾーンを拡大し、
エッジの向こう側への恐怖を減らし、
根源的な不安をマシにする
リハビリになる、ということでした。

具体的な例として、
解剖学者の三木先生の息子さんの
ドタバタ劇を、その観点から
分析しなおしたわけです。

今回は、私たちが
療養の現場で実際にできる
リハビリとは何か
それを追求してみましょう。

・・・

三木先生の息子さんのように、
身体運動のチャンネルで表現することは、
実は成人でも、できます。

ダンスムーブメント・セラピーという
心理療法では、
セラピストのサポートの中、
まさに、腰を振ったり
地団駄を踏んだりします!

そして、小椋はそれを専攻して
クライアントさんと一緒に
踊っていた時期もありますね。

諸事情で、今はその機会は
ありませんが、確かに、
身体運動のチャンネルが苦手ではない方には
とても自然な「攻め」の方法です。

通院中の患者さんの中には、
困ったら踊る、という方、おられます。

自分の好きな音楽に合わせて、
その時の感覚や気分に正直に、
踊る、というか、からだを動かす。

わーっと、手足を
バタバタさせたい気分なら、
実際、やってみる。

最初は、ちょっとずつ、
だんだん、勢いをつけて、
もう、ハアハア、いいながら、
もう、いい、もう、十分だ、
というぐらいまで
バタバタ振り回してみる・・・
で、徐々に、勢いをゆるめて、
ゆるめて・・・、じーっと
棒立ちになって、止まる。

何が、わーっとなっていたのか
言葉にはできないが、

身体運動のチャンネルを通じて、
その情報が、
自我を通過していったわけです。

たった5分、一人でもできる
ダンスムーブメント・セラピー
と言っていいでしょう。

・・・

身体運動のチャンネルは
得意ではないが、

視覚、例えば、絵を描く
というチャンネルが得意な方なら
絵画療法、というやり方もあります。

2週間に一回、
描いた絵をもってきて頂き、
診察で一緒に、
その絵について振り返る。

今の、正直な、自分の、
こころの、からだの、感覚を
そのまま、絵に、する。

ものすごく、冷たい、
氷のような、水の底。
暗い・・・、すごく・・・
息も苦しい・・・。
誰もいない、完全に一人。
何かが絡みつく感じ・・・
水草?

その絵をもとに、
担当医が、絵の状況を
お互いがより深く体験できるように
さりげない問いを繰り返す。

正解は、
誰にもわからない。

でも、エッジの向こうにある
得体の知れないものに、
目を背けず、チラ見を続ける。

この、
絵の制作とという
チャンネル・スイッチ

担当医との
ことばによる共有という
チャンネル・スイッチ
それ自体が、

患者さんのこころとからだに、
エッジの向こうの何者かを
自我に少しずつ取り込むリハビリとなり、

次の自然な展開を
用意するようです。

この、水の底、
どうなっているのだろう?
この、水の中の、白い、点、
これって、何だろう?

エッジの向こうを探る、
そのような問いかけを残して、
診察が終わります。

そして、2週間後、
できた絵をまた
一緒に振り返る。

そこには、微妙に、
でも、確実に、
変化がおきている・・・。

息が苦しいのは
水草のようなものが
まとわりついているからだが、
それって、ちょっと生暖かい・・・。
それが、死ぬほど気持ち悪い・・・。

白いのは確かに、泡のようだ・・・。
酸素が足りない?
でも、氷の破片のような
硬い感じもする・・・。

絵のイメージの共有と、
お互いの連想の共有・・・。
そして、次の診察までに
エッジを探る方向の提案・・・。

その繰り返し・・・。

これも、
エッジの向こうから
押し寄せてくる得体の知れない
何者かと折り合いをつけていく
有効な方法の一つになります。

・・・

踊りも絵も、苦手だ、という方、
おられると思います。

その方でも、
好きな作品、例えば、
小説や映画などがある、という方なら、
世界とのチャンネルを使って
チャンネル・スイッチが、できます。

ある患者さんは、
ディズニーの映画が大好き。

いつも、その主人公に
どっぷりなりきって
感動して大泣きする。

たいてい、主人公って、
大きなエッジを抱えながら
それに果敢に取り組むことで
そのストーリーを紡いでいきます。

だから、その映画に没入することが
エッジと向き合うリハビリに
自然となってしまうのです。

そして、その感動の顛末を
担当医に報告する、それも
聴覚のチャンネルへの
チャンネル・スイッチですね。

劇中の歌詞が、忘れられない。

それを思い出す度に、
完璧を目指しすぎて
自分で自分を苦しめて、
不安をふくらませていた、
それが、わかりました・・・と。

担当医が診察で伝えるよりも
映画の方が、たましいに
響くようです。

・・・

次回は、
「攻め」のテーマの続き、
増幅法についてお伝えします。

このシリーズも
そろそろ、終わりですね。

・・・

根源的な不安に
さいなまれている時、

Do: 
自分に馴染みのある
チャンネルを使って
チャンネル・スイッチに
チャレンジしてみる。

Don’t: 
自分には得意なチャンネルが
ないと、落ちこむ。

※他人と比べると
確かに、落ちこむ場合も
でてきます。
が、チャンネルの得意・不得意とは
「自分の中での」得意・不得意です。
根源的な不安が押し寄せる、
身体感覚のチャンネルに比べれば、
他のチャンネルは、得意だと
言えるのです。

いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、 
ぜひ一度、お問い合わせください。