2021/07/26
PSMのための雑談との付き合い方⑩:共同注意を求める衝動
さて、
雑談についてのシリーズ、
今回は、10回目になります。
前回は、こちら↓
会話でつまずくポイントを
4つ、
ボトルネックと名付けて
整理しました。
今回以降は、
この10回を踏まえた
実践編になります。
前田さん、引田さん、
そして日和さんに、
小椋が個別にカウンセリングをしたら
こんな内容になるだろう、
という流れで
お伝えしていきます。
まずは、
積極的に雑談に参加したい、
「前のめり」の前田さんから。
女子大生で、
自閉症スペクトラム障害の特性を
お持ちでしたね。
・・・
前田さんから、
雑談がうまくいかない様子を
聞くにつけ、
ツッコミどころが満載すぎて
数回に分けて、
アドバイスをすることになりました。
一番、目立つ失敗は、
自分が延々としゃべった後、
誰も反応がなく、
別の話題に移っていくが、
それには自分はついていけなくて
その場にいる意味がわからなくなる、
というパターン。
自分がしゃべりたいのは、
自分が一番、エネルギーを投入している
アニメの二次創作を扱っている
同人誌について。
その話題は、マニアックすぎて
雑談の仲間には
興味がわかないだろう、と
自分ではわかるのだが、
話さずにはいられない。
その衝動って、
どこからくるのか?
・・・
小椋は次のように
説明しました。
幼稚園の頃、
多数派の方たちは、
自然な発達の過程として、
自分に興味ある物を
ねえ、これ、見て!と
お母さんに見せようとします。
自分が注目するものを
他人と共有したいという
自然な衝動で、
共同注意、とも呼ばれます。
でも、多数派の方たちは、
小学校の高学年にもなれば、
自分が興味を持っても
相手が興味を持つとは限らないと
わかってきて、
ねえ、これ、見て!という相手を
選ぶようになります。
ところが、前田さんは、
自閉症スペクトラム障害の特性があるため、
幼稚園の頃には見られなかった
共同注意が、
大学生の今になって、
遅れて発達してきた可能性がある。
だから、
前田さんにとっては、
同人誌について
ねえ、これ、見て!と
相手を選ばず話すことは
自然な衝動だけれど、
雑談に参加する周囲のみんなは、
母親役を強要されている感覚に陥って
戸惑ってしまう、
ということなのです。
・・・
前田さんは、
かなり納得の様子。
小椋が続けて、
整理しました。
延々としゃべっている時、
前田さんは、
雑談の4つの役割の中で
何の役割を果たしていることになる?
1:世間を維持する役割
2:相手へのおもてなしの役割
3:ブレーンストーミングとしての役割
4:ストレスのはけ口としての役割
その、どれでもない。
強いていえば、4だが、
楽しいことを話しているので
グチとは、言いにくいよね。
さっき、
延々と話している前田さんは
周囲のみんなに
母親役を強要している、
と説明したけど、
その場って、実は、
前田さんが
幼稚園の時に実現できなかった
共同注意を、
大学生になったいま
周囲のみんなをセラピストとして
実現しようとしている、
カウンセリングの場になっている。
カウンセリングなら
それでOKだが、
雑談とカウンセリングは
区別しよう、という点を、
このシリーズの2回目で
お伝えしています。
なので、
前田さんの取り組むべき
方向は、
次の3つになります。
一つは、
みんなとの雑談の場ではなく、
カウンセリングの場で
その衝動を解放する。
もう一つは、
同人誌について
前田さんと同じぐらいの
興味をもっている人を見つけて
雑談の相手にする。
そして、3つ目は、
その衝動を、
雑談の4つの役割の中に
落とし込めるように、
工夫する。
・・・
実は、
もう、前田さんは
カウンセリングも受けていて、
一人だけだが、
同人誌の話ができる友人も、
いるようです。
なので、次回、
共同注意の衝動を
どう、雑談の4つの役割に
落とし込むのか、
相談することになりました。
・・・
雑談が苦手で困っている時、
Do:
自分の中にある
共同注意を求める衝動を自覚して、
相手を選んで解放するか、
話す内容を工夫して
雑談の場で解放する。
Don’t:
自分の中にある
共同注意を求める衝動に無自覚なまま、
雑談で解放し続けて孤立する、
あるいは、
抑制し続けて枯渇させてしまう。
いかがでしたでしょうか?
同じ悩みをお持ちの方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。