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2017/05/06

うつ病のタイプと治療法のマッチング:うつ脱出のための基礎知識③

うつ病に苦しむ方に、しんどい中で学んでもらう知識は、うつ病からの脱出に役に立たなければ、意味がありませんよね。
自分をどう治療したらいいのか、それがわかるような、うつ病の見方が必要です。

この記事は、「うつ脱出のための基礎知識」のシリーズ、3回目です。
自分に必要な治療法を見つけましょう。

1回目はこちら↓
うつ病とは?:うつ脱出のための基礎知識①
2回目はこちら↓
あなたのうつ病のタイプは?:うつ脱出のための基礎知識②
ここでは、からだ型の架空の症例:Aさんと、
こころ型および、混合型の、架空の症例:Bさんが登場しています。

そこでの知識が前提になりますので、
是非、目を通してください。

では、うつ病の治療法が、ヒトの4つの機能の、どこに効くのか、
その整理から、始めましょう。

精神科医が提供する治療法

うつ病のケアを提供するプロフェッショナルとしては、精神科医と臨床心理士が代表的です。
まずは、精神科医が提供する場合が多い治療法から、始めましょう。
特に、その治療法の不得意な側面や、留意点についてもコメントします。(⚠️と標記)

支持的精神療法

通常の診察の中で、本人の取り組みを評価し、
苦しみへのねぎらいや、治療に対する希望を伝え、「信じる」を賦活する治療法です。
地味ですが、うつ病の療養全体を土台から支えているとも言えます。
⚠️
「担当医と合わない」場合、ここがかみ合っていない可能性があります。
その時、通院がおっくうになり、治療中断のリスクが高まります。
惰性に陥ると、精神科医もあなたも、「考える」「感じる」「動く」など、他の機能低下についての本質的な課題にフタをしたまま、時間だけが経過する懸念があります。

心理教育

疾患についての知識を提供し、療養上の自助努力を促す治療法です。
知識の提供は、「考える」をサポートします。(この記事自体が、その一つです)
うつ病に関する一般論だけではなく、あなたの病状に特化した情報になっていることが理想です。
具体的には、
・あなたのうつ病のタイプは何か。
・最初に取り組むべき、ボトルネックがどこか。
・あなたの「うつ病のストーリー」が描けるか。
例:
カレンダーを振り返りつつ、このあたりで、4つの機能の低下が始まり、
このあたりで、チェーンが外れ、いま、これだけのダメージを負っているが、
今後、このボトルネックに取り組むと、徐々に、この機能から、回復し、
およそ、あと〇ヶ月で、ここまで回復できたら、よいだろう。
⚠️
一般論に終始するだけだと、あなたは具体的な行動に移せない懸念があります。
行動に移せないと、「動く」「感じる」など、他の機能の回復に結びつきません。

生活指導

うつ病になると、生活全般が、ガタガタになります。
毎日の生活自体へのテコ入れが、地味ですが、極めて重要です。
活動記録表による生活習慣の指導は、食事や睡眠覚醒リズム(「動く」)の回復を促します。
活動記録表については、こちら↓
うつ病の治し方:活動記録表は家計簿である
適切な運動や、ストレッチなども「動く」を、アロマの利用などは「感じる」を刺激します。
⚠️
信じる」の機能低下が強いと、このようなリハビリに取り組むモチベーションがわいてきません。
動く」への取り組みだけで満足すると、「考える」「信じる」の課題が放置される懸念があります。

薬物療法

【抗うつ薬】
抗うつ薬は、ロックの解除に有効です。
詳しくは、こちら↓
うつ病とは?:うつ脱出のための基礎知識①
⚠️
効かない場合も多い。4割の患者さんで反応が乏しいというデータあり(もっと厳しいデータも)。
Aさんの場合、幸いにも、2つ目の抗うつ薬が効きましたが、3つ目でも効かないケースがあります。
ロックを解除する他の方法に目を向けないと、多剤投与の泥沼が始まります。

【抗不安薬・睡眠薬】
抗不安薬は、「感じる」のコントロールの補助。
睡眠薬は、睡眠・覚醒リズムの回復(「動く」)の補助です。
⚠️
最終的には、無投薬の状態を目指しましょう。
なぜなら、抗不安薬も睡眠薬も、いずれ効かなくなるからです(耐性と言います)。
このレールを間違えると、どんどん、内服が増える結果になります。

電気けいれん療法・mECT

抗うつ薬でロックが解除できない場合、有力な選択肢です。
⚠️
入院と、麻酔処置を要します。
その負担が大きいので、重症のうつ病に対してのみ、適応されます。
詳しくは、こちら↓
磁気刺激療法・TMSがうつ病に有効な理由:電気けいれん療法・mECTとの比較から

磁気刺激療法・TMS

抗うつ薬でロックが解除できない場合で、かつ、
電気けいれん療法・mECTが適応になるほどの重症度ではない場合
この治療法が有力な選択肢になります。
詳しくは、こちら↓
磁気刺激療法・TMS
ロックがかかっている状態がボトルネックの場合、その解除により、4つの機能全体の回復に大きく貢献します。
⚠️
有効であっても、ボトルネックが「信じる」「考える」「感じる」にある場合、再発するリスクが高まります。
ロックの解除に有効でなかった場合、4つの機能の回復への貢献は、極めて乏しいです。
海外では保険が適応されますが、日本では自費診療になります。

休職・入院の調整

生活環境を大きく修正することにより、「動く」「感じる」「考える」、それぞれの機能への負担を軽減します。
休職では、業務や公的な対人関係の負担が劇的に軽減します。
入院では、自宅生活での負担(家族との対人関係、家事・育児)が軽減されます。
⚠️
職場や家族に迷惑をかけている、という考えが強いと、効果が乏しい場合があります。
休職・入院の期間中に、4つの機能の回復とパワーアップを図らないと、元の環境に戻れば、病状がぶりかえす場合があります。

公的保障制度、公費負担制度の活用

うつ病になると、収入が減少します。家計が逼迫すると、「動く」(の中のお金)がダメージを受けます。
それが、さらに他の機能に負担をかけます。
だから、障害年金、精神障害者福祉手帳、自立支援受給者証など、経済生活をサポートする対策は、重要なケアの一貫です。
活用するために必要な診断書は、精神科医が作成します。
⚠️
精神科医にこの認識が乏しい場合がり、あなたが十分な情報提供を受けていない可能性があります。

臨床心理士が提供する治療法

上記の中で、薬物療法、電気けいれん療法・mECT、磁気刺激療法・TMS、診断書の作成は、医師のみが行います。
それ以外は、臨床心理士が行う場合も多いです。
以下は、精神科医が提供する場合もありますが、臨床心理士の場合が多いでしょう。
さて、引き続き、整理していきましょう。

認知行動療法

コラム法(自動思考の記録とバランス思考への切り替え)は、まさに「考える」の機能回復を図るものです。
活動記録表も活用し、行動の活性化を促し、「動く」の機能回復を目指します。
この両者をバランスよく扱い、その結果、「感じる」の回復を促進し、最終的に、4つの機能全体の回復を図ります。
⚠️
感じる」の機能低下が著しいと、そのプラスのスパイラルが起こりません。
考える」「動く」の機能低下が著しいと、そもそも、この治療がスタートしません。

マインドフルネス瞑想法

呼吸(「動く」)や身体感覚(「感じる」)に注目しつつ、「考える」「信じる」の頑なさを解きほぐしていく方法です。
⚠️
「瞑想」というだけで抵抗感のある方がおられます。
呼吸や身体感覚に注目することが苦手な方にもハードルが高いでしょう。
提供す側の力量が問われます。それが不足していると、リクリエーションにしかなりません。

精神分析的精神療法

対人関係に現れた、感情(「感じる」)やイメージ・夢(「考える」)をテコに、
自分でも気づいていなかった「信じる」をあぶり出し、4つの機能のカタチに変化を起こす方法です。
幼児期の体験や、心的外傷となる出来事の影響で、元来、「信じる」に大きな機能低下がある場合、
この方法でアプローチする他ないケースも多いです。
⚠️
動く」への関わりが乏しため、その機能のダメージが大きいケースでは、うつ病全体への効果に欠けます。
あなたの機能低下の全体像が見えていない治療者の場合で、その懸念が大きくなります。

表現療法

絵でも、文章でも、踊りでも、写真でも、雑誌の切り抜きのコラージュでも、
ヒトが何かを表現するとき、4つの機能がつながらざるを得ません。
その効果をねらった治療法です。
言葉によるコミュニケーションが苦手で、他の精神療法がかみ合わない場合、決定打になる可能性があります。
こころ型であった当初のBさんのケースは、まさに、ピアノによる表現療法でした。
⚠️
提供す側の力量が問われます。それが不足していると、リクリエーションにしかなりません。

あなたのうつ病のタイプと、その治療法は、かみ合っているか?

さて、いかがでしたか?

あなたが取り組んできた治療法は、どれですか?
それは、あなたの4つの機能の、どこに、どれくらい、効いていますか?
あなたのうつ病のタイプと、その治療法は、かみあっていますか?

タイプ別に、重要なチェックポイントを挙げてみましょう。

⚪️からだ型
ロックを解除する治療になっているか?
抗うつ薬が無効でも、ロックを解除する他の治療法を検討したか?
「動く」「感じる」に有効で、チェーンをかけ直す治療になっているか?
「信じる」「考える」に対するカウンセリングに無駄なお金を使っていないか?

⚪️こころ型
「信じる」「考える」に有効で、チェーンが外れないようにする治療になっているか?
その治療までも、抗うつ薬がしてくれると思っていないか?

⚪️混合型
病状の、どこが「からだ型」で、どこが「こころ型」か、整理できているか?
その整理を踏まえ、ボトルネックかどこか、把握できているか?
そのボトルネックとなっている機能低下に、かみ合う治療が始まっているか?

⚪️型を問わず、必要な治療とサポート
医師との信頼関係は育っているか?
自分に特化した、うつ病回復のストーリーが見えているか?
休職や入院など、必用な環境調整を検討したか?
治療に専念できる経済状況は確保できているか?

さて、いかがでしょうか。
かみ合っていましたか?

おそらく、残念ながら、かみ合っていないと思います。
これが、あなたのうつ病が長引く原因なのです。

と同時に、どうすればかみ合うかも、見えてきたのではないででょうか?

その時、自分に必用な治療法が、ワンストップで揃う、
そんなクリニックがあればいいなと、私なら、思います。

だから、当院では、
うつ完全脱出プログラム」という治療メニューを用意しました。
詳しくはこちら↓
磁気刺激療法・TMSを中核とした「うつ完全脱出プログラム」とは